政権の「心配ない」信じて国民大被害 ミャンマーのサイクロン
国民投票の最中だった
番組後半は、頑なな姿勢を崩さない軍事政権と国際社会の対立に目を注ぐ。説明役は上智大学外国語学部の根本敬教授だ。
1990年、総選挙でアウン・サン・スー・チー女史率いる民主化勢力に完敗した軍事政権は、選挙結果を無視して彼女を軟禁、独裁体制を継続する。これに対して欧米諸国は厳しい経済制裁を科す。以来、お互いは不信感を募らせてきた。
「人的支援を受け入れたくないのは、何らかの形で政治利用するのでは、と疑念と恐怖心を抱いているから」と根本教授は述べる。
今度のサイクロンが襲ったのは、軍事政権が、憲法をめぐる国民投票を行おうとしている最中だった。法的正当性のない軍事政権は、合法的存在になりたいがために必死に『賛成キャンペーン』を繰りひろげる。「国のため 国民のため 『賛成』を投じましょう」と、タレントに歌わせるテレビCMまで流す。国際社会は投票延期を求めるが、強行した。
人権、人命軽視ともいえる軍事政権への国民の不満は、高まってはいるが、すぐに組織的政治運動になるとは思えない、と根本教授は見る。今は、自分たちの再建が急務だからだという。ただし、米不足が起きた場合、特にヤンゴンで米が手に入らない事態になれば、暴動の可能性がある。20年前、民主化運動の際に、何百万人の国民が参加するデモがあったときも、米不足が背景にあった、という。
「軍政は力で抑えつける自信があるかもしれないが、流動的だと思う。また多くの血が流れるとすれば残念」と教授はしめくくった。
サイクロンが襲ったデルタ地帯は国民が消費する米の6割を担っており、米不足が生ずることは確実視されている。状況は予断を許さないようだ。
見終わって、軍事政権、独裁だけは御免こうむりたい、という思いを強くした。
アレマ
<メモ:ミャンマー>外務省のサイトによると、と東南アジアのミャンマーは面積68万平方キロメートル(日本の約1.8倍)、人口5322万人。主要産業は農業。