「疑問感じ」てもだまされる 振り込め詐欺の「巧妙」
「夜眠れない」精神的にダメージ
これが「アポ電」と呼ばれ、犯人が犯行に及ぶ準備だということは、男性は知らない。「名前を名乗らなかったので、昔かわいがっていた甥と思った」と。
そして数日後、その「甥」から再び電話が。「今度は『友達と一緒に買った株が暴落した。家族に内緒にしている。すぐ友人の口座に84万5000円を振り込んで欲しい。早くしないと大変なことになる』と、たたみかけられた」という。
男性は一瞬、「疑問を感じた」が、頭に浮かんだのは「アメリカの株暴落のニュース」で、言われた通りの金額を振り込んだという。
被害に遭った人たちのその後だが、単に金銭を失くしただけでなく、「夜眠れない」など精神的ダメージを受けているという。
「孤独」と「身内の危機」という2つのキーワードに、最新の社会問題を絡めたストーリー。妻を亡くしたばかりの孤独ななかで、身内の危機をもっともらしく聞かされれば、役に立ちたいと思うのが人情。家族間の人情の機微を悪用した卑劣な詐欺だ。
国谷が「捜査の壁とは何ですか?」という問いに、米村総監は次のように指摘した。
「振り込め詐欺のグループは、大半は20歳代。深刻なのはこうした若者は罪の意識が希薄で、マニュアルで騙しのテクニックを身につけると、仲間を集めて新たにグループを組織している」と。
国谷の「新しい捜査手法が必要とお考えです?」に、米村総監は「詐欺グループにとって『ローリスク・ハイリターン』の状態を、『ハイリスク』に高めねばなりません。携帯電話の契約時には必ず本人確認を徹底してもらう。携帯通話記録の保存期間をもう少し延長してもらうのが切なる願いです」と。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2008年11月19日放送)