2024年 4月 26日 (金)

新潮VS朝日「襲撃犯告白」バトル 「これで終わり」じゃ納得できない

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取材過程の公表を

   そうした経験からいわせてもらえば、連載を読む限りでは、新潮がこの手記を掲載するにあたって、どれだけ裏付けをとったのかが、見えてこなかった。

   新潮側は、どんな反論をするのか。期待を持って買ってみたが、たったの2ページだった。反駁するなら、巻頭、10ページぐらい割いてやってもらいたかった。内容も、朝日の言葉の揚げ足とりで終始している感がある。朝日は「現場の状況と明らかに異なる点が少なくとも10項目あった」というが、その10項目を示していないではないか。朝日は、たった2時間半の面会で「犯人ではあり得ないと確信した」というが、こちらは数十時間密着取材した。朝日は、検証ではなく、「手記は間違いだらけという」というイメージを与えようと必死になっているように思える、などなど。

   最後に、「秘密の暴露となる可能性のある材料については全て手記内で提示している」と書いている。裏とりは時間の長さに比例しないことはいうまでもない。ましてや、これまでの連載の中で出ている材料は、状況証拠ともいえないものばかりである。

   緑色の手帳、犯行に使ったアジトの住所や散弾銃。これらの一つでも出せば、この論争に終止符が打たれるのだ。そんなものを出せるわけないだろうというのなら、なぜこのような人間の一方的な話を掲載したのかが問われる。

   新潮の肩を少しもてば、朝日側が、連載が終わるのを待って検証記事を載せたのは、もしかしたら何か出てくるかもしれないと「危惧」したのかもしれない。事件直後から、なぜ阪神支局が狙われたのか。小尻記者たちは、何か危ない事件に首を突っ込んでいたのではないかと噂された。それが、北朝鮮のニセ金情報だとは思わないが、この手記の中に、朝日側をハッとさせる何かがあったのかもしれない。

   何はともあれ、この手記がでっち上げだとすると、ただでさえ落ち込んでいる週刊誌の信用と部数が、更に落ち込むかもしれない。新潮は、社の威信をかけて、この告白手記が真実であると証明する義務がある。今度は、新潮側が、この記事の取材過程や原稿作成、掲載に至までを全て明らかにして、世に問うべきであることは、これまたいうまでもない。


元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)ほか

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