自分への挑戦と自転車レース 「仕事なし」でもあきらめない
親子3人そろってゴール
100キロに挑戦した3人家族がいた。山口清則(42)、美樹(42)夫妻と長男の一輝(16)。長男は障害があって養護学校へ通う。
母は、「社会で自立していけるように、完走して自信を持ってほしい」という願いだった。とくに「最後の坂だけは、降りずに登ろう」
母が先頭、長男をはさんで、後ろから父が見守る。しかし、70キロ地点で長男が足が痛いと止まってしまった。両親が足にスプレーをかけて励ます。そしてまた、3人で走り始めた。
だが、最後の登りで、とうとう長男の足が止まった。「ダメダメ」と母の厳しい声が飛ぶ。母はそのまま走り続けた。置いていかれた長男が、「ウオー」と泣き声をあげたが、母は止まらない。歩き始める長男。
坂の頂上で母は振り返った。すると、長男が自力でこいで登ってきた。「がんばれば登れるんだよと見せたかった。根性あるなと嬉しかった」。3人はそろってゴールのゲートをくぐった。
自転車が好きな作家の山本一力は、「すばらしいものを2つ見せてもらった。泣き声が耳に残った。両親もすごいし、自力のゴールは間違いなく自信になったろう」という。
「自分と向き合うスポーツをする人が増えてきた」と国谷。
山本は「好きなんですよ。スポーツは人と較べたがるが、好きならば較べない。どこまでやれるか、自分を認めてやったら、どんどん楽しくなる。自転車に限らない、スポーツに限らない、何にでもいえることです」といった。
わたしは山登りだった。あれも順位のつかない、較べないスポーツ。常に自分との闘いだったが、いつも仲間が一緒だった。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2009年7月6日放送)