阪神・淡路大震災―負傷4万人取り残された16年
2011.01.21 17:46
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周囲からは「生きているだけでもまし」
この主婦は一例に過ぎない。県の実態調査でも、負傷し障害を負った人たちの65%が別の病院へ転送され、うち60%が行政による相談窓口の存在を知らなかったという。池埜教授は負傷し障害を追っている被災者について次のように語った。
「2つの側面で今も苦しんでおられる。1つは折り重なる喪失体験。家族との死別、住居の喪失、入院、子供の転校と喪失が一挙にやってきて、生きていることが辛さの要因だと思うようになっている。
もう1つは自分たちが忘れ去られた存在だったということ。遠方の病院に転送されて長い間入院し、戻ってみると被災地は復興・再建に向け前進。生きているだけでもましだと言われ、喪失感の辛さや痛みの声を上げることができなかった。また、周りも聞こうとはしなかった」
キャスターの国谷裕子は「なぜそうした痛み、辛さに気づかないで見落としてしまったのか。どう思いますか」と聞く。池埜教授はこう話す。
「ひと言でいえば、社会や行政の想像のいたらなさだと思う。これからのことを考えると、行政や医療機関が負傷者と直接つながりを持つことが大事。
たとえば、いまは負傷者の特別のカルテ、台帳ができないか議論されています。そういう台帳があれば、医療や行政の情報を共有できるし、負傷者がどういう暮らしをしているかもわかる。今からでも遅くないと思う」
遅まきながら、行政を中心にした想像力欠如への反省、情報共有の必要性を16年目の教訓として学び始めたといえる。
*NHKクローズアップ現代(2011年1月19日放送「届かぬ支援 震災負傷者4万人」)