気仙沼信金「再建融資」―立ち上がる気力あるなら積極的支援
16兆円とも25兆円とも、東日本大震災の被害は、緩やかな回復とみられていた日本経済に大打撃を与えた。 これをどう乗り切るのか、国谷裕子キャスターが白川方明・日銀総裁に聞いた。
日銀は震災直後の1週間で3100億円を被災地へ送った。通常の3倍。市場にも半月で120兆円を超す資金を供給。また、超低金利による1兆円の貸し出しを決め、地方金融機関に利用を呼びかけている。
白川総裁は「日銀でなければできないこと。中央銀行がやるべきことは資金面での不安の解消と決済システムの維持だ」という。まだ融資は動き出してはいないが、金融面での条件は整えたという。
現場はいまその前段階だ。気仙沼信用金庫は支店のあらかたが壊滅したが、3日後には2店舗を再開、85年の歴史が培った3000社におよぶ取引先からの相談に大忙しだ。融資担当の高橋弘則さんは地元出身、キャリア30年。
「資金繰り、再建の費用、新たな借り入れができるか、みな心配している。立ち上がる気があって、方向性のある話ならば、できるかぎり支援したい」
「負けてられない。一緒にがんばろう」
【被災地支援】
気仙沼信用金庫の30年来の取引先である家畜の飼料会社は、施設が流され社長は行方不明だった。
「社長見つかった?」
「見つかった。7日が火葬だった」
会社は再建のつもりがある。が、飼料の原料は水産加工会社から出る魚のアラである。加工会社が動かないと話が始まらない。「負けてられない。一緒にがんばろう」と高橋さん。
フカヒレ加工会社には、融資だけでなく販路の開拓にまでかかわった。昨年改装したばかりの工場が使えなくなっただけでなく、施設の復旧だけではすまない問題を抱えている。船が出て魚があがってこないと仕事にならない。その船がない。社長はいま気仙沼で続けるかどうかで悩んでいた。
「魚があがる次の港は銚子だ。その銚子からこっちでやってくれといわれている」
カツオに欠かせない氷。地元の大手製氷会社は1階の電気系統は水没したが、2階の製氷装置は無傷だった。復旧には4、5000万円必要だが、融資残が数億円あってリスクがある。高橋さんの融資の提案に、気仙沼信用金庫としては「地元として前向きに検討」となった。「わたしらがあきらめたんではね」と理事は言ったが、同時に「どこまで支えられるか。 ずーっととなるかもしれない」
白川総裁は「経済と金融は裏表。経済がよくなれば金融も改善する。現地はまだ復興のプロジェクトができていないが、それができてくれば、特定の下支え策も検討したい」と話す。