スピルバーグ「不安な時代だから映画の果たす役割大きい」
2012.02.23 19:15
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CGだったらつまらない映画になっていた「ジョーズ」
スピルバーグに世界が注目したのは1971年の「激突」だった。不気味なトラックに執拗に追い回される男の恐怖が高く評価された。29歳であのサメの「ジョーズ」が空前の大ヒットを飛ばした。
―あなたが監督した主人公は、自分ではどうしようもない状況に陥りながらも、最後はそこから抜け出します。それが良いストーリーかどうか見極めたうえで、重要な要素にしているのでしょうか。
「私がこれまで惹きつけられてきた物語は、すべてチェンジに関係しています。つまり、心の成長です。過去の自分から新たな自分へと変わっていく。困難に耐えたり危険を犯したりしてその成長を実感できるストーリーなら、伝える価値があるはずです。一番大事なのは特殊効果でも、興行成績でもなくストーリーなのです」
―あなたは「ジェラフィックパーク」で真っ先にデジタルの扉を開きました。いまやCGを駆使して何でもつくれます。映画製作者はこうした新しい技術とどう向き合っていくべきだとお考えですか。
「私にとってデジタル技術は表現したいものを復元するツールに過ぎません。絵筆と同じで、絵そのものをつくり出せるものではないのです」
―「ジョーズ」の時は機械でできたサメを使っていました。今のCG技術があの頃あったとしたら、あの時より怖い映画ができたと思いますか。
「ノー、サメの姿はよくなったでしょうが、成功はしなかったと思います。なぜなら、あの時はサメの装置が壊れて動かなくなったことで私は映画の設定全体を書き直し、観客に深い恐怖を引き起こさせるための別の方法を探らなければならなかったのです。
思いついたのはサメがいるべきシーンに登場せず、水平線だけを映したり、泳ぐ人間の足だけを映した。デジタル技術でサメを表現ばかりしていたら、あれほど成功はしなかったでしょう」
国谷が最後に「あなたにとって映画とは何ですか」と聞くと、スピルバーグはこう答えた。 「映画とは私が生きていくためのものです。『未知との遭遇』のシーンで少年がドアを開けると、その向こうにものすごい光が見えます。いまの私の姿でもあるんです。映画を製作しながら未知の世界の扉を開いているんです」
モンブラン
NHKクローズアップ現代(2012年2月22日放送「永遠の映画少年スピルバーグ~創造の秘密を語る~」