家族が迫られる延命装置外す決断―専門学会「中止も選択肢」のガイドライン
意識ない本人の意思どう判断
国立長寿医療研究センターは昨年10月(2011年)、終末ケア専門チームを作って、最善の医療とは何かをさぐっている。畠中千代子さん(74)は昨年11月に夫を亡くした。10月に肺炎で入院したとき、「胃ろう」を付けるかの判断を迫られた。夫は脳梗塞で倒れた7年前、「延命治療は辞退する」という文書にサインをしていた。しかし、千代子さんの決断で夫の命が決まる。悩んだ。専門チームは、夫の意志を確かめるためにペンをもたせた。不自由な手で「連れて帰ってくれ」と書いた。これで決まった。夫は自宅に戻り、自分で撮った花の写真に囲まれて亡くなった。千代子さんは、「写真を1枚1枚目で追っていました。穏やかな表情でした。これでよかったと思ってます」という。
日本老年医学会は3月、「本人にとっての最善を考え、水分、栄養補給の差し控え、中止も選択肢に」とのガイドラインを出した。 「亡くなるまで」としてきた現場に投じた大きな一石だ。しかし、ことは簡単ではない。新田國夫医師は「止めることは即ち死ですから、本人がどんなに意志をもっていても、家族は『私が決めていいのか』と悩む。生存権も尊厳もある。最善の医療の判断は難しい」という。しかし、「最後は本人の意思を尊重したものであるべきだ」と言い切った。
新田氏はまた、「看取りの医療が必要」ともいった。本人の意志がわからないとき、「だれが決めるか」は重い。少なくともこの負担を家族にかけてはいけない。元気なうちから意思を示し続けるしかあるまい。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2012年5月17日放送「人生の最期 どう迎える?~岐路に立つ延命医療~」)