2024年 5月 2日 (木)

福島原発避難住民「生殺し状態」遅れに遅れる損害賠償手続き

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土地評価、所有者確定、金額格差など次々トラブル

   なぜ遅れているのか。賠償手続きに必要な個人情報の入手が遅れていることが大きい。当初、東電は賠償額の算定の根拠に、自治体から固定資産税の評価データを提供してもらうつもりでいた。しかし、総務省から資産に関する個人情報はより慎重に扱うべきだとして反対され、1か月余の議論の末に断念。代わりに、自治体が被害者一人一人に書類を送る方法になった。何もしないまま4か月が過ぎてしまったという。

   さらに、別の問題が浮上した。登記上の所有者と実際に住んでいた人が異なるケースが続出し、全体の3分の2に当たる2万件に達したのだ。祖父や父が亡くなった後も名義を変更しないケースが多かったのだが、取材にあたった福島放送局の記者によると、都市部と違って、土地の取り引きのない地方では「名義変更しないのはごく普通で珍しいことではない」という。相続上の整理がされていないと、賠償は支払われない。「東電と被災者だけでなく、被災者の身内の間でトラブルが発生しかねない」という理由だ。こうして2年が過ぎてしまった。

   待ちきれなくなった被害者から、国の第三者機関である「原子力損害賠償紛争解決センター」に早期の支払いを申し立てる動きも出てきている。申し立てのなかには、東電の賠償基準の不公平さについての苦情申し立てもある。放射線が下がれば避難指示が解除になる「居住制限区域」は、「帰還困難区域」に隣接しても賠償額は半額に減らされる。また、自宅の放射線量が下がっても周囲の森林や学校、病院などの放射線量が高ければ、戻って住むことはできない。きめの粗い東電の賠償基準では、被害者に不満が多いのだ。このため、紛争解決センターは新たに独自の基準を設け、今後の賠償の調停に反映させることにしている。

文   モンブラン
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