死に方ぐらいが自分で決めたい…本人の意思より家族の「延命要請」優先の医療現場
「事前希望書」で患者の意思明確化
リスク回避の苦肉の策といった印象だが、延命治療を望んでいなくても、なかなか本人の意志を貫くことができない中で、どうすれば最期の希望を叶えることができるか。
地域の医療関係機関と連携して、希望をかなえるように動き始めたところがある。愛知県大府市の国立長寿医療研究センターは、6年前から終末期の医療について、患者の希望を事前に確認する「事前希望書」に取り組んでいる。当初は病院内だけのものだったため、患者が退院して他の病院で治療を受けると役に立たなかった。事前希望書を書いた患者を追跡調査したところ、亡くなった20人のうち3人が他の病院で亡くなり事前希望書は生かされなかった。
この穴を埋めるために、責任者である三浦久幸在宅連携医療部長は地域の医療機関と連携を進め、事前希望書の内容を地域で共有できるように取り組んでいる。事前希望書を電子化しサーバーに保管して、救急車でどの病院に運ばれても、救急隊員や搬送先の医師がそれを閲覧できるようにする計画だ。
三浦医師は家族との間の迷いや混乱が生じないようなシステムにも取り組んでいる。一つは、家族のなかから一人、本人の代理人を事前に決め、事前希望書に署名してもらうことで実効力を持たせることにした。もう一つは、本人が人生において最も大切にしていることは何かを書いてもらう。家族や医師がそれを共有して本人の意識がなくなった後でも本人の希望が叶えられるようにした。
国谷「事前希望書に人生観まで踏み込んで書くことの重要性をどう見ますか」
新田医師「普通、医師のカルテは血圧とかの数値しか書かれていません。しかし、日常生活の大きな流れ中で判断するためには、人生観を書き込むことがとても重要な取り組みになってきます。私たちも是非やらなければいけないと思っています」
高齢化社会が進む中で、終末医療の現場で本人の希望に叶った最期をどう実現するか。本人、家族、医師が真剣に考える時代を迎えたようだ。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2013年4月3日放送「『凛(りん)とした最期』を迎えたい~本人の希望をかなえるには~」)