2024年 4月 17日 (水)

ミツバチ守れ!EU「夢の農薬」使用規制…大量死で野菜・果実農家打撃

   EU(欧州連合)はこの5月(2013年)、ネオニコチノイド系農薬の規制を決定した。この農薬は少量でも効果・持続性が高く、コストも安い「夢の農薬」として世界中で使われている。農家への経済的な打撃ははかりしれないのになぜ規制するのか。理由はミツバチだった。

   ミツバチの大量死や突然いなくなったりが世界中で報告されて10年ほどになる。原因はダニ、ウイルス、ストレス、異常気象などさまざまにいわれるがはっきりしない。そんななかで、EUはこの農薬が原因の可能性があるとしたのだ。

ネコチノイドで3割が方向感覚失い帰巣できず死滅

   科学雑誌「サイエンス」に昨年4月、フランスの科学者がミツバチの実証研究を発表した。ミツバチに極小のICチップをつけ、致死量に満たないネオニコチノイドをつけて行動を観察した。その結果、普通のミツバチに比べ2倍近く、最大で3割が方向感覚を失い、巣に帰れずに死ぬというのだった。フランス・ロワール地方の養蜂家は、以前から大量死はブドウ畑の農薬が原因だといっていた。それが証明された形だった。しかし、メーカーは「ほ場では相関関係は認められない。科学的根拠はない」と否定する。それでもEUが規制に踏み切ったのは、「予防原則」の理念だった。

   多くの国が国境を接するEUでは、環境への重大な影響が懸念される場合は、因果関係が十分解明されなくても予防措置をとるのが原則になっている。影響が広がってからでは遅いからだ。オゾン効果や温暖化対策もこれでやった。ただ、今回は12月の実施から2年以内に見直しを行うとしている。この間に因果関係を突き止める。EU委員会は実証不十分は認めながらも、「判断のもとは、いま何をすべきかだった」という。

   ミツバチは野菜、果物の栽培には欠かせない。100種類の農産物の7割以上がミツバチの受粉に依存している。そのミツバチの大量死は農業の死活問題だ。アメリカでもヨーロッパでも続いており、日本でも先月に北海道で起った。養蜂場の地面が数千匹のミツバチの死骸で埋まっていたのだ。

   しかし、ネオニコチノイドもまた農家の強い味方だ。浸透性、持続性が高いから、散布前の種子にコーティングするだけで後の手間は一切要らず、何もしなくても虫を寄せ付けない。日本でもイネの害虫カメムシに最適の農薬である。EUの規制の行方を世界中が注目するのもこのためである。

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