「イクボス」いま企業が求める新しい管理職タイプ!部下の私生活に配慮しやる気を引き出す
管理職の評価は「何でも話せる職場を作れるか」
国谷はゲストの佐藤博樹教授(東京大学)に「生活が充実してこその仕事。そして、なるべく任せるという川島さんのマネージメント方針、どう考えられましたか」と聞く。「管理職としてやるべきマネージメントをきちっとやれていると思いました。管理職というのは自分に課せられた課題を自分でするのではなくて、部下がきちっと仕事を意欲的に取り組むことで管理職の仕事が達成できます。部下を育て、部下に意欲的に働いてもらうために配慮するのが、管理職です。
川島さんが従来の管理職と違うのは何かというと、いまの部下は仕事も大事だけど、仕事以外に子育てなど、いろいろ大事なことがわかっています。部下が意欲的に働くことに配慮していると思っている管理職はたくさんいますが、部下が変わってきたということを理解していない人が多いと思います」
国谷「社員の心配事を極力なくすということですけども、その心配事を把握するということはプライベートに関わる問題だけに、難しくないですか」
佐藤教授「仕事以外でどんな事情があるのかなどは、なかなか聞き出しにくいのは事実です。個人のプライバシーに深く関わるのはあまりよくないという議論もあります。でも、そこが分からないと、支援のしようがないわけです。ですから、やはり社員が個人的な事情などを上司に言えるような雰囲気を作っていく。そのためには、管理職自身が仕事だけではなくて、こういう大事なことがある、こんな事情があるということを職場で言えるような雰囲気にすることがすごく大事だなと思います」
国谷「そのための最も効果的な方法はなんでしょうか」
佐藤教授「まずは管理職の登用基準を見直しです。仕事が自分でできるだけではなく、部下に仕事を任せ部下が意欲的に働ける、そういう育成能力がある人を管理職にする。そして、すでに管理職になった人のマネージメントを変えるために、管理職の評価基準を変えるということです。時間制約のある社員でも働けるように、たとえば過度な残業をなくすとか、有休を取りやすいような職場にするとか、そういう取り組みをしたことを評価する。あるいは、部下の育成をきちっとやれる管理職を評価する。管理職の評価基準を変えれば、管理職のマネージメントも変わると思います」
それって、昔から日本の企業では家族主義として当たり前にやられてきたことではないのか。成果主義というようになってそうしたシステムが壊れ、ブラック企業が幅を利かせるようになってしまったので、慌てて「イクボス」なんていう言葉を作って、あらためて「企業はやっぱり人だ」と言っているように見える。管理職の評価基準を変えるだけでなく、経営者の経営理念こそ見直されなくてはならないんじゃないのか。
*NHKクローズアップ現代(2014年6月16日放送「『イクボス』ってどんなボス?~人材多様化時代の上司像~」)