ベルリンの壁崩壊から25年―右派排外主義台頭で崩れ始めたEU統合の理念
2014.11.07 14:51
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「平和は全てでないが、平和がなければ全てが無である」
さらに、EUの統合理念そのものが今、問われている。今年(2014年)5月に行われた5年に1度の欧州議会選挙では、反EU、反ユーロ、反移民を掲げる政党が躍進した。フランスでは極右の国民戦線(FN)が国内で最多票を集め、イギリスではEUからの離脱を訴える政党が現れた。
国谷「フェアホイゲンさんはこうした動きを懸念されていますか」
「とても危惧しています。ヨーロッパに何よりも必要な連帯感が失われつつあると感じます。元の民族ごとの国家に逆戻りすれば、各国の利害の衝突が起きて大変な事態になると思います。ヨーロッパ統合のモデルはこれまでのところもっとも進歩的で、最も成功を収めた概念のひとつです。自動車や飛行機よりも最も優れた輸出品になると思います。私が政治家として信念にしてきた言葉があります。『平和は全てでないが、平和がなければ全てが無である』。西ドイツのブラント首相が残した言葉です」
厳しい内憂に苦悩するEUだが、さらに新たな外患に襲われている。ウクライナ問題を契機に軋轢が生じたロシアと今後どう向き合っていけばいいのか。どうすれば新たな秩序を築くことができるのか。フェアホイゲン元EU副委員長は「EU統合が冷戦の落とし子として生まれたことを忘れてはならない」と強調するが、具体的な方向はまだ見出していない。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2014年11月5日放送「ベルリンの壁崩壊から25年① 岐路に立つヨーロッパ統合」)