谷崎潤一郎「細雪」モデルの妻に200通の手紙「御寮人様の忠僕として、お側にお使いさせていただきたく・・・」
2015.01.09 15:06
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高橋源一郎「「あの時代にああいう小説が生まれた驚き」
作家で明治学院大学教授の高橋源一郎氏は谷崎の心境をこう語る。
「谷崎は関東大震災のあと関西に移住し、そこで大阪、あるいは関西という文化を探っていく。とくに女性の優しさ、まろやかな言葉遣いを探っていくうちに、彼にとって日本文化の源流みたいなものを見つけたのではないか。戦争とか東の国の言葉はちょっと違うのではないかというのがこの作品に書き込まれているように思います」
「あの時代にああいう小説が突然変異のように生まれたのは今でも驚きです。昭和16年に戦争が勃発し、それから4年ぐらい、ほとんどの作家は作品を書けなかった。目ぼしい作品といえば太宰治の短編かこの細雪のみですよ。美しい作品であると同時に、その時代にふさわしくない巨大なものが、美しいものとして存在することで極めてまれなものだったと思う」
番組では、戦時下の松子が細雪を必死で守ろうとしたことが今回の手紙で見つかったとしていたが、圧力に対し2人がどう守ろうとしたかは、残念ながら紹介された手紙では「私の手でできる限り写したく一、二年全力を注いでみようと存じます」だけだった。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2015年1月7日放送「谷崎潤一郎の恋文~文豪が貫いた意志~」)