2024年 5月 6日 (月)

<ゲームの規則 前篇>(テレビ朝日系)
永山絢斗が出色!マヌケで哀しい「特殊詐欺一家」の息子・・・金貯め込んで使わない年寄りが悪いのさ

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   親子3人を演じる役者がめっぽううまい。なかでも息子役の永山絢斗が出色だ。長いこと櫛を入れてない頭髪に無精ひげ、擦り切れて袖口がバラけそうになったスエットでグタグダしてる若い男。こんなむさくるしいヤツ、たまに近所で見かけるよねっていう感じ。

   父親役は光石研、母親役は赤間麻里子と、地味だが確実に演技力のある二人だ。そうして、結果、怖くなるくらい現実感のある詐欺ドラマになっている。

巨大団地の一室で展開する30分―瀧本智行の脚本・演出みごと

   彼らは一家ぐるみ自宅で「特殊詐欺」をやっているのである。「特殊詐欺」とは、トバシの携帯電話をいくつも使って電話をかけ、現金を私書箱に送らせる手口で相手に会わずにだまし取る詐欺の総称で、いわば「オレオレ詐欺」の進化形である。話は一家が住む郊外らしい巨大団地の古くて狭い一室だけで展開する。時間もたった30分だが、瀧本智行の脚本・演出の力はみごとだ。

   まず息子が証券会社社員を装って年配女性に電話をかける。手元には「独居老人」と記された「顧客名簿」とすべてのセリフが書かれた「台本」が開かれ、それに従って「値上がり確実、エボラ出血熱ワクチンの開発に成功しそうな製薬会社の株」を勧める。

   が、いまどきそれだけでは引っかからない。そこで声をひそめてたくみに攻めてゆく。「実は創業者一族の一人が、亡くなられたご主人に学生時代たいへんお世話になったので、ご恩返しがしたいと。ただ、ここだけの話にしていただかないとインサイダー取引に引っかかる恐れがありますが」

   で、購入することになると、今度は警察を名乗る男(もちろん父親である)が電話をして「金融取引法第197条インサイダー取引違反の疑いがある」とドスのきいた声で脅す。台本には「権威を笠に着たように」「専門用語は立て板に水の如く」との指示まで入っている。そして、被害者がおびえたところを見計らって、今度は冷静な女性弁護士(母親である)が「被害者団体を設立し、刑事問題になる前に食い止めようということになりました。弁護料200万出せますか。次に言う私書箱に現金を送ってください」とやるわけである。

   息子の言いぐさは「景気がちっとも良くならないのは年寄りが貯め込んだ金を使わないからなんだよ。オレたちは日本経済を回してやってんだよ」

   上からの受け売りだが、若い下っ端がいかにも言いそうだ。

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