2019年 3月 20日 (水)

年収600万円、退職金3000万円でも危ない「老後破産」年金だけでは毎月4万円の赤字

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   「下流老人」という言葉が流行っている。イヤな言葉だが、昨今は週刊誌はもちろんのことNHKスペシャルなども「下流老人」「老後破産」問題を扱い、身につまされる悲惨なケースを紹介している。

   この言葉は1982年生まれの藤田孝典氏がつくったものだが、下流老人の定義は「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」というものである。彼の書いた「下流老人」(朝日新書)は10万部を超えるベストセラーになっている。

   それを読むと、現在の非正規労働者はもちろんのこと、40代で年収600万円ぐらいあるサラリーマンも下流老人予備軍だという。私は中流の『並』ぐらいだと考えていたが、年金生活が長くなると自分が下流老人化していっているのが実感としてわかる。

   今週も『週刊新潮』が「激増『老後破産』誰でもハマる危険がある悪いパターン」、『週刊文春』も「『老後破産』はこうして防げ!65歳からの資産防衛術」という特集を組んでいる。週刊文春によれば、厚生労働省の国民生活基礎調査(2013年)では1世帯あたりの年金収入は月額約17万7000円だが、高齢者世帯の1か月の平均支出は約21万7000円といわれるから、毎月4万円程度の赤字になる。

   そのほか、家のリフォームや車の買い替え、孫への小遣いなどといった「特別支出」もあり、そうしたものを入れると、退職金が3000万円程度あっても長生きすれば安心はできない。病気、熟年離婚でもすればあっという間に『晴れて』下流老人の仲間入りするのは間違いない。高齢者世帯の相対的貧困率は22%だが、これが離婚して「お一人様」になると年金が減るから、男性が38・3%、女性は52・3%と急上昇する。

   先週の『週刊ポスト』は再来年予定されている消費税10%が実施されれば、藤田氏のいう「一億総下流時代」が早くも到来するのではないかと警鐘を鳴らしていた。週刊ポストによれば、消費税が10%に引き上げられると、年収300万円未満の世帯でも年9万5882円の負担増になると「みずほ総研」が試算している。下流老人層には死活問題である。

   それでなくても、アベノミクスの円安のせいで食品などの輸入原材料も軒並み値上がりしている。そこに消費税アップ時の便乗値上げがあれば、下流老人予備軍が真性下流老人になって貧困層を拡大することは間違いない。

『下流老人』著者・藤田孝典「必要なのは救貧ではなく防貧。貧困対策基本法作れ」

   下流老人半歩手前の私も老後貧困に無関心ではいられない。埼玉県さいたま市にあるNPO法人「ほっとプラス」を訪ね、藤田氏に話を聞きに行ってきた。

   小柄だが明るくはっきりした話し方をする素敵な若者である。彼は貧困は自己責任ではなく、いまの社会構造が必然的に生み出しているものだから、生活保護をもらうのを躊躇することはない、「社会保障を受けることは権利です」といい切る。申請主義を止めることはもちろんのこと、生活保護を「救貧対策」ではなく「防貧対策」に使うべきだと主張する。

   いまの制度では、完全におカネが底をつき、にっちもさっちもいかなくならなければ支給されない。だが、そうなった人はすでにうつ病などの症状が出ているか、重篤な病気にかかっているケースが多く、働くことができないのはもちろんのこと、即入院・治療となってしまう。病気予防のように、そうなる前に下流老人たちを補足して救わなければいけないはずなのに、そうなっていないのはおかしいという。まことにもっともな意見である。

   ちなみに、貧困者の補足率は日本は15~30%程度だが、ドイツは64・6%、フランスは91・6%もあるそうだ。それは社会保障政策がきめ細かく行われていることの証左である。

   日本は家賃にかかる割合が欧米などと比べても大きく、年金の半分が家賃に消えてしまうという高齢者が多い。ヨーロッパ各国では少子化対策として、民間借家への家賃補助制度や公立住宅の建設を増やすことなど住宅政策を転換したことで効果を上げているという。日本も早急にそうするべきである。

   このままいけば、日本の年金制度は5年、10年後には必ず破綻する。したがって、若者に無理矢理年金を払わせるのではなく、貧困対策基本法を作り国民の防貧や救貧対策を国家戦略として強化するべきだ。フランスの経済学者ピケティのいうように、一部の富裕層から徴収して再配分するなど社会保障を手厚くしていくことこそが喫緊の課題だと藤田氏は続けた。

   消費税を8%に上げるとき、そのほとんどを福祉の充実に使うと公約したはずである。それがゼネコンや株式市場に湯水の如くカネを垂れ流し、福祉はやせ細っていく一方である。週刊新潮、週刊文春が資産、年金の増やし方を伝授しているが、これはまだ資産が何千万円か残っている人のことである。生命保険や医療保険はいらない。住宅ローンは前倒しで払ってしまえ。病気をしないように身体を鍛えろ。みなごもっともだが、結局、この中で私が頷くのは、いかに節約するかを考えろということでしかない。

   04年に導入された「マクロ経済スライド」によって、65歳のとき年金が月20万4000円ある人も、70歳で19万円、75歳で17万4000円、80歳で15万8000円と減らされていくのである。国は長生きはするなといっている。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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