「鬼面人をおどす」鬼だらけの側近で固まったトランプ政権 安倍首相の「お友だち路線」では日本は譲る一方だ
こわもて2人の起用で北朝鮮武力攻撃が現実味に
NHKの田中正義ワシントン支局長は「こわもての2人を起用することで金正恩委員長に約束を反故にするのは許さないと示した。北朝鮮の非核化を少しでも疑えば、米国は交渉をスパッと打ち切り、より強い圧力に戻るということだろう」と見る。
北朝鮮に対する限り、こうした交渉方法が悪いとは言い切れない。むしろ、甘い期待はこれまでことごとくひっくり返され、核武装の時間稼ぎをされてきたことは事実だ。北朝鮮の独裁政権はないほうが世界のためだという考えも、もちろんあり得る。
ただ「トランプ大統領が先のことをどこまで深く考えているかはわからない。複雑な動きを調整できる人材、主導権を握れる専門家がいない」(ライス国務長官の顧問だったフィリップ・ゼリコー氏)から危ういのだ。「私ならまず韓国と話し合うチームを派遣して意見を聞く。こうした動きがない」(ヒル元国務長官)といった不安が消えない。そういえば、駐韓大使も北朝鮮問題担当特別代表も空席だ。
小谷准教授は「米朝会談が失敗したら戦争になる懸念が高まっている。できれば会談が行われない方がいいという声もある」とさえ指摘する。
貿易問題でも、トランプ大統領は強硬だ。中国に対して関税を引き上げ、日本にも「米国を利用する時代は終わった」と言い出した。世界貿易戦争の危機を漂わせながら、強硬発言が続く。
田中支局長は「貿易赤字を減らすためになりふりかまわない。秋の中間選挙、2年後の大統領選を強く意識してアピールし、支持をつなぎとめたい。その交渉は最初に強く出てから落としどころを探る『ディール』の手法だ。野球でいえば、内角高めの球でまず打者をのけぞらせる」という。
同盟国の日本に対しても貿易圧力は強まるだろう。気まぐれで狭隘な自己中心の米国第一主義が、トランプ大統領の性格と政策だ。「その裏にはトランプ氏を支持する米国民の声がある。米国の社会が変わりつつあります」と小谷准教授は語る。
これでは、安倍首相のお友達路線が通じなくなると思わないといけない。安易なご機嫌取りだけでは譲る一方に追い込まれる。そうでなくても米国追従のNDAは根強いのだ。内角高めを投げられて腰を引いてはヒットなど打てない。
※NHKクローズアップ現代+(2018年4月2日放送「異常事態トランプ政権 相次ぐ辞任劇の内幕は」)