レジが無人のコンビニ、現金を置いていない銀行...キャッシュレス化でアナタの暮らしはどう変わる?
個人のデータが企業や政府にまる見えになる危険
しかし、課題もある。73歳のスウェーデン女性は「現金のほうが安心だ」という。これまで週1回、現金を引き出して使ってきた。サイフの残りがわかり、日々の出し入れを振り返られる。ところが、周辺に3台あったATMが1台になってしまった。行きつけのパン屋も現金では買えなくなった。「ゆっくりと変わるべきで、変化を押しつけるのはよくありません」
個人のデータが企業や政府にまる見えになる危険もある。中国では、スマホ決済の銀行や企業に融資を申し込むと、OKの場合は1秒で入金される。融資する側に客の取引先や支払い能力などの情報が詳細につかまれていて、瞬時に可否が判断されるのだ。融資側は「データから相手の人物像がわかる。データ活用が利益につながる」といい、こうした融資の規模は7兆円という分析もある。
キャッシュレス化について、昨年(2017年)12月に日本で世論調査をしたところ、賛成は48・6%、反対は51・4%だった。とくに女性の反対が61・5%にのぼった。「浪費しそう」「感覚がマヒするのでは」といった理由だ。セキュリティーへの不安も否めない。
岩下教授は「高齢者がとくに慣れていない。無理じいはよくありません。合意の上で使いたい人が増えるようにしていけばいい。少子高齢化の中で生産性を上げるためにも推進を」と指摘する。
誰もが安全に使えることが前提でなければいけない。そうはいいながらスウェーデンのように現金を使えない店や銀行が勝手に増えていく恐れがある。誰一人でも気づいたら暮らしていけない状態にしないように、キャッシュレス化には当面「現金と両立」の条件つきで進める必要があるだろう。さまざまな問題を置き去りにして、ただ進めればいいというのはあまりに愚かで乱暴だ。
※NHKクローズアップ現代+(2018年5月14日放送『現金お断り』で暮らしが激変!?~追跡・キャッシュレス最前線~)