2024年 4月 26日 (金)

日産・西川廣人社長ケチな自己保身「悪いのはみ~んなゴーン。私はな~んも知らなかった」で逃げられるか?

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   「ゴーンは日本人をナメていた」

   ゴーン元日産会長の逮捕以来、インタビューに答えていなかった西川廣人社長兼CEO(65)が、週刊文春に120分間"激白"している。日本経済新聞も同日に西川のインタビューを掲載しているから、西川社長側に思惑があって、新聞1紙、週刊誌1誌を選んだのであろう。

   内容はひとことでいえば「丸ごと自己弁護」である。いくつかあげよう。冒頭に紹介したように、西川は、「日本への敬意があれば、あんな不正ができるはずはありません」と前置きして、ゴーンは日本をナメていたと難じている。

   最後にゴーンと会ったのは昨年9月下旬(2018年)で、ルノーとの経営統合について話し合ったが、平行線に終わったとし、「彼の不正を知ることになったのは、そう言い合っていた矢先のことでした。まさに青天の霹靂だったんです」と、自分が何も知らされていなかったかのように話している。

   内部通報をきっかけに社員の何人かが調査を行い、その結果が西川に報告された。最初の感想は「何なんだ、これは」というものだった。「とにかくワケが分からなかった」というのだ。このような重大事を、彼に知らせないで社内で密かに動いたというのは有り得ないと思う。もしそうだとしたら、よほど西川は社内の信頼がなかったのであろう。

   「私はまさか自分のボスが裏でこんな重大な不正行為をしているとは、思いもよらなかった」「私はゴーン氏と個人的に親しいわけではありません。(中略)今回の事件で高級マンション暮らしが取り上げられるまで、どこに住んでいるかも知りませんでした」

   その一方で、ゴーンとは問題意識を共有していたから、「ゴーン氏のほうは私のことを、たぶん『日本人のボスとしても、外国人のボスとしても務まる男だ』と見ていたのでしょう」と、自己顕示することは忘れない。

   ゴーンが約2兆円の有利子負債を抱えていた日産をV字快復させたことについても、「実際の改革を成し遂げたのは、工場、開発、販売・・・その前線に立つ従業員、それぞれの仕事の現場の力であり、一人のリーダーの力ではない」と斬り捨てる。

   ゴーン・チルドレンの最右翼といわれ、僕(しもべ)のようにゴーンに付き従ってきた自分のことを棚に上げ、これからのルノーと日産とのアライアンスについても、自分がルノーの新会長と話し合い、「(自分なら=筆者注)良い方向に進化させることができる」と語る。

   今回の件で日産の輝きが失われてはならない、より磨きをかけなくてはいけない。「それが、今の私に課せられた使命だと思っています」と、まるで自分に責任などないといわんばかりである。

   世界(岩波書店)3月号で、会計評論家の細野祐二が「日産ゴーン事件の研究」を寄稿している。ここで細野は、有価証券報告書虚偽記載罪など、ゴーンが起訴されている罪状の一つ一つを検証している。

   ここで詳しく紹介する紙幅はないが、ゴーンが先送りした50億円の報酬を「手にする蓋然性は極めて低かったと判断すべき」だとし、この虚偽記載は根拠がないとしている。

   また、会社私物化についても、海外の高額マンションは日産が購入したものだし、それをゴーンが専属的に使用していたということに過ぎない。そこには損失が発生していないから会計上の役員報酬とはならないそうである。

   特別背任も、ゴーンが故意にやったことで日産の財産上の損害が認定できなくてはならないが、それはなかったから犯罪事実は成立しないとしている。さらに、2回目の有価証券報告書虚偽記載罪では、報告書の代表者名は「西川廣人」と記載されているから、<本件二回目の有価証券報告書虚偽記載罪が成立するとすれば、その主犯は西川廣人現社長になるはずで、ゴーン元会長はその共犯者あるいは幇助犯ということになる。特捜検察は、今回第二回目の逮捕において、正犯容疑者を逮捕することなく共犯あるいは幇助犯容疑者だけを逮捕した>と指摘する。

   特捜検察はゴーン容疑者の逮捕容疑のほぼ全てを日産の内部情報に依存しているから、検察と西川は共存関係にあるために、西川を逮捕できない。<特捜検察は、一民間自動車会社の内紛に刑事司法をもって介入したばかりに、愁霜烈日たるべき法の正義を自ら歪めてしまった>と批判している。

   私には会計法などまったく分からないから、細野のいうことの3分の1も理解できないが、少なくとも、西川社長のいい分よりは利があると思う。

パナソニック社長「わが社は10年も持たない」死亡宣告に社内パニック

   社長というのは、どこの企業でもなかなか理解しがたい生き物のようである。週刊現代によれば、パナソニックの津賀一宏社長(62)という人もユニークではっきりものをいう人らしい。

   2月10日(2019年)の日経新聞朝刊に掲載された津賀社長のインタビュー記事が、パナソニック内で話題になっているという。津賀はこういっている。<「現在の危機感はもう200%、深海の深さだ。今のままでは次の100年どころか10年も持たない」>

   津賀は2012年に社長に就任して以来、大赤字を垂れ流したプラズマテレビ事業の撤退戦を指揮するなど、老舗の革命児としてトップを張ってきたという。その社長が「近いうちに潰れるかもしれない」といったのだから、社内の波紋は大きかったようだ。幹部社員がこういう。<「経営がうまくいっていないことが、活字になって念を押されたような形で、会社よりも自分の将来を不安視する社員が増えました」>

   そんなことをいうのなら、オレが社を立て直してやる。そういう松下幸之助のDNAを受け継いだ社員はいないようだ。そこが津賀社長のいう危機感なのだろう。津賀はこうもいう。

   <「米国の店に行ったら消費者がうちのプラズマテレビとティッシュとバナナを同じワゴンに入れて買っていた。 『テレビが安いからプールサイドかガレージで使うんや』と。開発者はホームシアターとしてリビングで使ってもらおうと高画質にしているのに。

   アホらしくてやってられるか、と思った。日本メーカーがなぜ世界を席巻する商品を出せていないか。答えは単純だ。日本のお客様の声を聞いてきたから」>

   客の声など聞くからいけないといわんばかりだ。津賀はテスラ社との騒動の顛末についてもあけすけに答えている。<「(テスラの問題が落ち着いたのか)知りません。テスラのお守りしてるわけではないですから。大変な一年だった。(中略)イーロンから『もうかってない』とメールが来る。私は『本当は隠してるのとちゃう』『ロス多いからやろ』と返す。せめぎ合いですよ。はっきり言ってうちはもうかってない。こんなはずではない」>

   提携相手とのこともこうしてハッキリ喋ってしまうのは、社員としては、困ることもあるだろう。

   週刊現代が日経記事の真意を聞きに行ってみたら、ご本人も、<「申し訳ないけど、あの記事に関しては、あんまり取り上げられたくないんですよね」>

   それはないんじゃないの社長! 活字になったら、その言葉が独り歩きするのだ。それを知らなかったとすれば、あんたはチコちゃんじゃなくて幸之助に叱られるぞ。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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