2024年 4月 25日 (木)

薬に頼らないうつ病治療に保険適用・・・高木美保「私は7年苦しみました。朗報です」

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   患者が100万人を超えるうつ病の3分の1が抗うつ薬が効かず、再発を繰り返すという。そこに、この6月(2019年)から新たらしい治療法が保険診療に加わった。効果は限定的だが、これで復職したケースも出ている。

   この治療法は経頭蓋磁気刺激(TMS)と呼ばれる。うつ病は思考や意欲を司る「背外側前頭前野」の機能の衰えによって起こると考えられているが、磁気によってここを直接刺激することで、活動量が増加することがわかった。アメリカでは、抗うつ薬が効かない患者の3~4割に改善効果が認められているという。

   鈴木さん(仮名41歳)は元IT企業のシステムエンジニアで、休日はバイクのツーリングを楽しむ若者だった。10年前、月100時間の残業による過労でうつ病を発症した。不安感、焦燥感に苛まれ、遅刻、欠勤、外出意欲をなくし、味覚までがおかしくなった。休職して投薬治療を受けたが、4年前に退職した。

   TMSは主治医の勧めだった。5月末、慶應大病院で治療が始まった。歯科に似た椅子に掛けると、頭部に伸びる器具がある。磁気発生装置だ。カチカチとかなりの音がして、顔が痙攣もする。これを1回10~40分、週5回6週間、計30回行う。

磁気で脳を直接刺激

   初回、鈴木さんは「変わりはない」といっていたが、6月中旬、15回を終えた時には、「この2、3日、多少気持ちよくなった。きのう久しぶりに食事をした。ビーフストロガノフがうまかった」と話した。治療にあたった野田賀大・特任講師は「味が感じられるのは回復してきたと考えられる」と説明する。

   うつ病患者は喜びや不安といった感情を司る「扁桃体」の過剰活動で、不安を感じやすくなっていると考えられている。「背外側前頭前野」を刺激することで扁桃体を制御する力が回復して、喜びを感じる力が戻るという。

   6月下旬、治療が終わりに近づいたころ、鈴木さんはバイクショップにいた。10年以上も遠ざかっていたバイクを再開する意欲が出てきたのだ。バイクに触りながら、「バイトで働かないと」という。

   この治療法を始めたシアトルの精神科医、デビッド・ダナー氏を訪ねた。「日本でもTMSが始まって嬉しい」と言うが、再発患者も抱えていた。「精神科の治療に100%はありません。TMSは重症の人に効果がありますが、すべての人に長く続くとは限りません。経過を見守ることが重要です」と説明する。7年前に行った追跡調査では、120人のうち37.5%が1年以内に再発していた。

   厚生労働省の調査(大企業)でも、うつ病治療後に復職して、再び病気休暇を取った人の数は1年後で28.3%、2年後で37.7%、5年後には47.1%という。うつ病治療がいかに難しいかを表す数字だ。

画期的な精神医療

   かつて重いうつ症状を体験したタレントの高木美保さんは、「7年間苦しみました。薬に頼りながら、依存症が怖かったですね。薬以外の道は朗報になるかもしれません」という。

   慶應大の宮田裕章教授は「過度の期待は禁物ですが、抗うつ薬で効果がない人の4割に効果というのは、精神医療としては画期的なことです」

   ただ、このTMSの保険適用は「難病性うつ病」に限られる。軽度のうつ病や他の病気に伴ううつ症状には適用されない。

   ところで、高木さんはどうやって立ち直ったのか。これが滅法面白かった。「あるバラエティー番組で思いっきり笑えた時に戻ったなと思いました。職場で取り戻した時が、一番自信になります。私はカミングアウトしたけど、黙っていても変だなとわかります。その時、遠慮しないで『穏やかな踏み込み』が必要かもしれません」

   なるほど。で、調子が悪くなったら? 「すぐカウンセラーにかけこんで、薬も早めにもらって、甘えちゃいます。私は(真面目すぎ、努力しすぎといわれた)前向き病だったので、後ろ向きに生きることに切り替える」

   武田真一キャスター「自分のペースで、後ろ向きでもいいなということですかね」

   高木さん「怠けることは、誠実さがなくなることではないでしょう」

*NHKクローズアップ現代+(2019年7月17日放送「社会復帰に新展開!最新のうつ病治療」)

文   ヤンヤン
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