廃墟ホテル、撤去に「10億円以上」 堤伸輔「日本全体の縮図に見える」

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   北海道の大雪山国立公園はいま、紅葉の真っ盛りだが、この中心にある天人峡温泉では4つのホテルのうち3つが廃業、うち2つが廃墟の姿をさらしたまま。撤去するだけでも10億円以上かかるという。27日(2022年9月)の「モーニングショー」は、日本に850万戸あるという「空き家問題の縮図」として問題点を探った。

   北海道の旭岳は、日本で一番早く紅葉が楽しめるスポットとして知られ、その近くにある天人峡温泉は、270メートルの落差がある羽衣の滝などでも知られる。そうした絶景を台無しにする「廃墟ホテル」が、割れた窓ガラスや、雑草が伸びたままの露天ぶろなどの姿をさらしている。

  • 紅葉の季節だが…(写真はイメージ)
    紅葉の季節だが…(写真はイメージ)
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菊間千乃「国立公園の中のホテルは...」

   羽衣の滝を見る観光客は、天人峡温泉の公共駐車場に車を止めて、約750メートルの緩やかな坂を上って行く。その途中に廃墟となった2つのホテルがある。なぜ廃墟になったのか。2010年に大雨の影響で、温泉につながる唯一の道路が土砂崩れで寸断され、客と従業員合わせて300人以上が孤立した。客足が遠のき、12年には「天人峡グランドホテル」の所有者が自己破産し廃業。2年後には「天人峡パークホテル」が廃業に追い込まれた。18年には、「天人閣」も廃業した。その後、「パークホテル」は経営者が自主的に解体したものの、2軒が廃墟として残った。同温泉でただひとつだけ残った「御やど しきしま荘」の専務は、「肝試しだとか廃墟めぐりだとかで、警察沙汰にもなった。夜騒いだり、騒音トラブルもあって」。

   地元東川町の松岡市郎町長は、「(撤去に)10億以上の投資が必要だろう。とにかくマイナスイメージが非常に大きい」。「防犯上、景観上も付近の衛生問題も含めて問題があるだろう。本当にひどい状態で放置されたまま」。「われわれは手を出すこともほとんどできない。ですから、相当な時間がかかることになると思います」。

   撤去への壁としては、(1)温泉地全体が国有地(国立公園)だが、国はこれまで具体的に動いていない。今年6月に北海道と地元自治体の呼びかけで、国も含めた撤去検討委員会を始めた、(2)このなかで、撤去費用が10億円以上。最大1億円の補助金を使っても自治体などの負担が大きすぎる。

   コメンテーターの菊間千乃(弁護士)「国立公園の中のホテルは、自然公園法の規定で、事業者が廃業した場合は、建物撤去など事業回復が決められているが、破産した場合は難しい」「土地は環境省の所轄になるが、危険度の高い場合に限って訴訟を起こすことになる」。

   堤伸輔(元フォーサイト編集長)は「日本全体の縮図に見える。いま日本で850万戸の空き家がある。木造一戸建てからマンションの一室まで。首都圏だけでも空き家が200万戸。そういう問題を解決しないまま、ここまできた。7年ほど前に特措法ができて、対策は少しずつ進んでいるんだけれど、まだ追いついていない」

(栄)

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