2024年 4月 19日 (金)

「CanCam」「JJ」が凋落 女性誌売れなくなった理由 

   大手出版社の女性ファッション誌が軒並み「部数2ケタ減」と苦戦している。「CanCam」(小学館)や「JJ」(光文社)が代表例だ。その一方で、「InRed」「sweet」(宝島社)など絶好調な雑誌もある。何が「明暗」を分けたのだろうか。

「InRed」「sweet」は絶好調

   人気モデルの蛯原友里さん、押切もえさん、山田優さんが、ひと頃、表紙を飾っていた「CanCam」。1980年代に創刊され、似たような女性ファッション誌(以下女性誌)が続々と出てきたなかでもダントツの存在だった。

   「モデルが他の雑誌に比べてかわいい」「エビちゃん系、もえカジ系、優OL系のように、わかりやすく提案されていて、参考になる」というのがネットに書き込まれた読者の意見で、モデルに好感を持つ読者が多かったようだ。ただこれは数年前の話で、「今は昔」になっている。

   2009年5月4日付け「文化通信」に掲載された「08年下期の雑誌販売部数」(日本ABC協会レポートから作成)によると、「CanCam」は34万6466部と女性誌のなかでは売れている方だが、前年同期比でみると24.25%減と、大幅に減っている。

   また、「CanCam」に並んで女子大生に絶大な人気があった「JJ」も、同24.12%減の10万9853部。JJは「お嬢様系ファッション」を得意とし、ひと頃は「合コンでモテるスタイル」としてもてはやされていた。

   「MORE」(集英社)は同比10.56%減の35万2097部、「non・no」(同)も同比15.12%減の25万8648部、「with」(講談社)は同比11.06%減の33万2410部と、大手出版社の女性誌はほとんど2ケタ減だった。

   その一方で、「InRed」は107.22%増の23万4583部、「sweet」は65.11%増の31万9364部、「spring」(宝島社)は37.58%増の24万867部と、「雑誌不況」をものともしない絶好調ぶりを誇っている。毎号、ブランドとコラボした付録がついていることでも人気を呼んでいる。

ターゲット別のプロモーションに力を入れる

   宝島社広報課は、好調の理由をこう説明する。

「当社は07年の春頃から、全社的に雑誌のマーケティング活動を行っています。雑誌を商品として見た場合に、読者にいかにして価値を感じて頂けるかという点について毎号議論を重ねています」

   また、読者獲得のために工夫している点について、

「雑誌やブランドアイテム(付録)自体の企画が良いことは大前提ですが、それだけでは伝わりにくいので、読者を増やすために、表紙、定価を毎号検討しており、対読者、対流通など、ターゲット別のプロモーションに力を入れています。部数が伸びるということは、既存の読者だけでなく、それ以上に多くの方々に読んでいただくということなので、一般の方の視点を持つことが大事なのではないかと思います」

としている。

   「S Cawaii!」(主婦の友社)は前年同期比16.12%増の15万6002部、「nicola」(新潮社)は10.7%増の15万8821部と、2ケタ増だった。

   こうした雑誌以外でも健闘しているところもある。例えば、12.49%増、27万4951部の「LEE」(集英社)。広報室は、

「編集方針にブレを作らず、ナチュラルでセンスの良い『LEEテイスト』をずっと大事にしており、他社にはない独自の個性があります。また、不況下で『おうち』に目が向いている今の世相も追い風になっています」

とみている。

   LEEはネットの活用にも力を入れている。雑誌と連動した通販サイト「LEEマルシェ」は、「年間売上げが7億円を超えた」。読者のニーズが的確にわかり、誌面にも反映できて相乗効果になっている。

   売れた女性誌と売れなかった女性誌の「違い」は何だろうか。

広告主よりの企画では売れない

   出版業界の調査機関、出版科学研究所の研究員は、大手出版社の女性誌が売れなくなった理由について、こうみている。

「クライアント(広告主)よりの昔ながらの雑誌作りをしているからですよ。この春はコレがはやる、秋はアレがくる、みたいな企画をやっていますが、クライアントが売りたい商品と企画をくっつけただけ。高額商品が売れたバブリーな時代にはそれでもよかったのですが、バブル崩壊で景気が悪くなり、消費者の生活スタイルや嗜好が変わりました。旧来型では売れなくなったんです」

   そこで台頭してきたのが、「小悪魔アゲハ」(インフォレスト)、「SEDA」(日の出出版)、「ブレンダ」(角川春樹事務所)、「グリッター」(for LAYLA)といった、ギャル系、ストリート系の新しい雑誌だ。これらはクライアントよりの旧来型とは異なり、本当に店ではやっているものを特集し、読者目線での誌面構成がうけた。

   「売れているのは『ギャル系』『ストリート系』で、今後ますます、この傾向が強まるのではないでしょうか。ViVi(講談社)は当初、JJ、CanCamと同カテゴリーでしたが、ギャル系にシフトしてから売れていますよ」(出版科学研究所)

   「ViVi」の08年下期販売部数は前年同期比2.12%増の34万2595部。2ケタ増とまではいかないが、「CanCam」に迫る勢いだ。

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