2024年 4月 24日 (水)

「DASH村」のヒマワリ栽培 放射性セシウム吸い上げを期待

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   東京電力福島第1原子力発電所の事故によって、テレビ番組の企画で「開村」した「DASH村」は計画的避難区域に含まれてしまった。ここにきて、村の再生を目指そうと、土壌の放射能汚染を減らすためヒマワリを育てる試みが始まった。

   ヒマワリは、土中の放射性セシウムを効果的に吸収すると言われる。だが原発に近い場所だけに、作業は高い放射線量を浴びる危険と隣り合わせだ。

チェルノブイリ事故後に実験で成果

土壌浄化の切り札となるか
土壌浄化の切り札となるか

   人気グループのTOKIOが出演する「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ系)で誕生した「DASH村」は、福島県浪江町にある。東日本大震災と福島第1原発の事故により、常駐していたスタッフや飼育されていた動物は別の場所に退避し、その後は村での活動を中断している。

   2011年8月25日、TOKIOの山口達也さんが会見し、7月以降2度にわたって村に入ったことを明かした。実は6月に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から土壌の放射性物質を浄化するため、ヒマワリの種をまく実験を提案されていたのだ。村の訪問は、山口さん自身が被ばくを防ぐ防護服に身を包んでヒマワリの種をまいたり、土のサンプルを採取したりという作業のためだったという。

   植物を使った土壌の浄化は「ファイトレメディエーション」と呼ばれる。重金属をはじめとする有害物質や、放射性物質も吸収する植物がある。1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の後では、汚染された農地に菜の花を植えて土中に含まれるセシウムやストロンチウムを吸収させる取り組みが続いている。2006年からはNPO法人「チェルノブイリ救援・中部」が、チェルノブイリの南西70キロの場所にあるウクライナの町、ナロジチで菜の花による土壌浄化を進めている。

   ヒマワリも、チェルノブイリ事故後の1994年に実験された報告がある。原子炉から1キロの場所にある池でヒマワリを水耕栽培したところ、セシウムやストロンチウムを吸い上げて根などに蓄積し、一定の成果を上げた。

   国内では現在、ヒマワリで放射能に汚染された土壌の浄化につなげようとの動きが活発化している。JAXAの「宇宙農業サロン」は、「ヒマワリ作戦」と称して計画的避難区域の数か所で試験的にヒマワリを栽培している。

作業者の外部被ばくをどのように抑えるかが課題

   宇宙農業サロンがまとめた資料を見ると、セシウムは肥料のひとつであるカリウムと化学的な性質が似ており、植物が取り込みやすい物質だという。またヒマワリは、比較的大きくなる植物なのでセシウムを多く摂取できるうえ、栄養分が貧弱な土地でも育ちやすい特徴がある。チェルノブイリの成果を根拠に、実験に使う植物として選ばれたようだ。

   「ヒマワリ作戦」では、汚染された農地における土壌中のセシウムの濃度を1キログラムあたり5000ベクレル以下に、また日常生活で子どもが接する学校周辺や公園では同1000ベクレル以下に、それぞれ低減する目標を掲げる。

   課題もある。ひとつは高い放射線量の区域でヒマワリの栽培をする際、作業者の外部被ばくをどのように抑えるかだ。「DASH村」でも、TOKIOの山口さんらが作業できたのは2時間程度だったという。

   もうひとつは、ヒマワリをどう処理するか。土中のセシウムはヒマワリに蓄積しており、消滅したわけではない。ヒマワリ自体が、言わば「放射能汚染物質」になるため、安全に取り扱う必要がある。対処法について宇宙農業サロンでは、第1段階としてバクテリアを使ってヒマワリを水と二酸化炭素、ミネラルに分解させる。このミネラルにセシウムが含まれるため、第2段階ではミネラルをセメントに固めるといった放射性廃棄物としての処理を施す想定だという。

   当面は実験段階が続くが、どれほどの効果が上がるかは未知数の部分もある。粘り強く長期的な取り組みが求められるだろう。

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