1周年の弔鐘で瞼によみがえる消防団員の壮絶な最期【岩手・大槌】

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海に向かって黙とうを捧げる参列者たち=仮設団地広場で
海に向かって黙とうを捧げる参列者たち=仮設団地広場で

(ゆいっこ花巻;増子義久)

   「カンカンカン…」―。4日午後2時46分、半鐘の音が瓦礫(がれき)と化した眼下の荒野に響き渡った瞬間、海に向かって手を合わせていた参列者の間から嗚咽(おえつ)がもれた。震災1周年を前にこの日、大槌町安渡仮設団地で開かれた追悼式。半鐘を叩き続けながら絶命した越田冨士夫さん(当時57)の1年前の壮絶な最期がみんなの瞼によみがえった。


   「冨士夫さんが火の見櫓の上で半鐘をたたいている姿を高台で多くの人が目撃していた。あっという間の出来事だった。津波に飲まれてしまった後も半鐘の音だけが…」と言って小国ヤスさん(80)は涙をぬぐった。大槌町全体の消防団員の殉職者は14人で半数以上の8人が安渡地区の団員だった。越田さんが最後まで叩いていた半鐘も見つからず、その後、岡崎市の消防団から贈られた半鐘がこの日、弔鐘を響かせた。


   安渡地区では当時の住民1953人のうち218人が死亡したり行方不明になり、住宅も7割近い562戸が全壊した。大槌町出身で現在は花巻市に住んでいる伊藤喜一郎さん(60)と信子さん(60)夫妻も犠牲者の霊を慰めるために駆けつけた。ごく近い親族だけで38人が犠牲になり、まだ6人が行方不明のまま。「震災11か月目の先月11日、おじやおば、いとこなど11人、5家族の葬儀を合同で済ませました。昨夜も38人の名前を紙に書き写しながら、一睡もできませんでした」と信子さん。


   仮設団地が建っている敷地は旧安渡小学校の跡地で、現在も残っている校舎は震災後避難所として開放された。その一室に雛人形の写真が飾られていた。「写真で帰ってきたおひなさま」。撮影したのは安渡地区で薬店を経営していた煙山佳成さん(73)。「80年以上も前から代々伝えられてきた雛人形だった。表情が良かったので15年前、一枚一枚写真に収めた。人形本体は津波に流されてしまったが、不思議なことにこの写真だけが自宅跡に残っていました」。煙山さんはこう言って、眼をうるませた。「人形たちが私たちを忘れないでと訴えているみたいで…」


   この日、仮設団地の広場ではこの地に古くから伝わる、稚児たちによる雁舞道七福神や安渡虎舞などの郷土芸能が演じられた。あの大震災以来、1年ぶりに再会する人たちがあちこちで無事を確かめ合う光景も。「やっぱり、故郷の芸能が一番だねえ。これを見ていると元気を貰うような気がして」とみんな身を乗り出して舞に見入った。


   「三陸一帯の民俗芸能には『眠るな、起きろ。起きて、無念の気持ちを残された私たちに伝えてくれ』といった激しさがある。つまり、単に魂を鎮めるというよりは逆に死者の魂を奮い起こすという『魂(たま)ふるい』がその原点だともいえる」。勇壮な虎舞の舞を見ながら、先月23日、民俗芸能研究の第一人者、茶谷十六さん(前たざわ湖芸術村「民族芸術研究」所長)が語った言葉をふと、思い出した。


   壊滅的な被害を受けた「安渡地区」も間もなく、再生に向けた震災1周年―「復興元年」を迎える。


七福神を熱演する小学生=仮設団地広場で
七福神を熱演する小学生=仮設団地広場で
勇壮な虎舞に「私たちも前を向いて」と参列者た地=仮設団地広場で
勇壮な虎舞に「私たちも前を向いて」と参列者た地=仮設団地広場で
奇跡の生還を果たしたお雛さまの写真と煙山さん=旧安渡小学校内で
奇跡の生還を果たしたお雛さまの写真と煙山さん
=旧安渡小学校内で
無事の再会を喜ぶ参列者たち=仮設団地広場で
無事の再会を喜ぶ参列者たち=仮設団地広場で


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ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
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