ヒマラヤ雪男は「チベットヒグマ」だった 登山家たちはなぜ騙されたのか

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   雪男(イエティ、もしくはメテ)といえば、現在もヒマラヤ山脈などで目撃情報が出るUMA(謎の未確認動物)だ。その姿は大型類人猿とされたが、登山家の根深誠さんが近著で、イエティの正体は、日本の動物園でも飼育されている熊の仲間の「チベットヒグマ」だと明かした。

   イエティがヒグマだと明らかにされなかったのは、いくつかの理由があるという。なぜ真相は隠されてきたのか。

毛皮や足はクマのもので頭蓋骨は人間のもの

   根深さんの著書は「イエティ=ヒマラヤ最後の謎『雪男』の正体=」(山と渓谷社刊)。2012年6月中旬に発売された。

   根深さんは白神山地の保護活動で知られ、30数年のヒマラヤ登山歴がある。90年代から本格的にイエティの正体を探っていた。ポイントとなったのは、イエティはUMAではないということ。実際に見た探険家や、捕まえたという地元民が存在するからだ。

   根深さんがチベット周辺の村や日本に持ち込まれたイエティの「足」、毛皮、頭蓋骨と言われるものを鑑定したところ、足や毛皮はクマのもので、頭蓋骨は人間のものだった。ネパール西北部にあるツァルカ村で、イエティ(ここでの呼び名はメテ)の写真があるというので行ってみたところ、それはヒグマであり、載っていたのは北京で出版された漢方薬の図鑑だった。イエティを殺したことがあるという別の村を訪ねたら、「クマに似ていた」などと言われた。

   そもそもイエティはチベット語でメテと呼ばれているが、メテの英語のスペルはmi dredで、「mi」は「人」、「dred」は馬熊。馬熊というのはヒグマの仲間で日本ではチベットヒグマと呼ばれているという。

   こうした研究から根深さんはイエティが日本の動物園でも飼育されているチベットヒグマだという結論に達した。そして、なぜ現在に至るまで、チベットヒグマがUMAの扱いだったのかについて様々な見解を述べている。まず、原住民がクマにあまり馴染みがなく、それをイエティと信じ、民話や宗教などと結び付けていたこと。やがて世界的に話題になり、「観光資源」として存在価値が高まったこと。さらに、正体不明にしたことで利権のようなものが生まれたのではないか、とも分析している。

正体を隠すとクライアントから援助が出る?

   それはイタリアの著名な登山家R・メスナーが2000年に出版した著書「My Quest for the Yeti」に書かれているもので、1930年にイギリスの登山家がイエティの足跡の写真を発表しセンセーションを巻き起こしたが、ドイツの物理学者E・シェーファーがこの足跡の正体はチベット・ベアだと証明し著作も出した。するとイギリスの高名な登山家2人がシェーファーに対し、英語の出版物での公表はやめてほしいと懇願したという。理由はイエティの正体が分かれば、クライアントの出版社がエベレスト遠征の費用を出さなくなるから、というものだった。根深さんはこの著述が真実ならば

「それとも知らずに、後世において冒険ロマンを追い求めた冒険者は、ことごとく茶番を演じたことになる。私もまさにその1人だった」

と書いている。

   それでもイエティは存在すると考えている人は世界中に存在する。ゴリラのような生き物だとか、身長3メートルもある約10万年前に絶滅した巨大類人猿ギガントピテクスの生き残りではないか、と主張する研究者もいる。

   昨年11月にはロシアや米国、中国など7カ国の研究者が参加したイエティ捕獲の国際会議がロシアの西シベリア・ケメロボ州で行われた。そして今年1月、イエティが捕獲されたというニュースがロシアで流れた。動物園で公開されるというものだったが、これはロシア南部のイングーシ共和国の労働社会発展大臣の狂言で、動物園の檻に入っていたのはゴリラの着ぐるみをまとった動物園職員だったため、来場者は大きな失望を味わったという。

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