2024年 4月 18日 (木)

早大グループが「人工赤血球」を開発 大学見本市で発表

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    今年度のノーベル医学生理学賞が山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所長に決まり、科学界は沸いている。数個の遺伝子の操作で、どんな細胞にも育ちうる万能のiPS細胞(人工多能性幹細胞、新型万能細胞)は間違いなく近年の日本技術の頂点だが、実はそれに匹敵するような目ざましい技術がないわけではない。

輸血用として長期保存が可能

    2012年9月27、28日に東京国際フォーラムで開かれた大学見本市「イノベーション・ジャパン2012」で、早稲田大学重点領域研究機構の酒井宏水・上級研究員グループが発表した人工赤血球の開発がその一つだ。

   赤血球は 3週間程度しか保存できないが、グループは期限切れの赤血球から主成分のヘモグロビンを精製、脂質膜で包んだ直径250ナノメートル (ナノは10億分の1) のヘモグロビン小胞体に再生する技術を確立した。途中で摂氏60度10時間の加熱処理が可能になったため、感染源を排除して長期間保存でき、血液型もない。空気に触れるとすぐに酸素と結合する。輸血用人工血液としては、病院で長期保存できるので、緊急事態や不測の災害にも対応でき、血液型の間違いもなくせる。また、濃厚酸素液として脳梗塞や心筋梗塞直後の治療、臓器保存などの用途も考えられる。脳梗塞治療に有効なことはネズミ実験で確認ずみ。実験室では数リットル規模の製造法が完成している。

   大学見本市は大学の研究者と企業を結びつける場。土田英俊・理工学部教授 (故人) らが約20年前に合成に成功して以来、早稲田大学は人工血液研究で世界をリード、すでに実用化段階に達したと見られる。しかし、これまで強い関心を示したのは米国やイスラエルなどの軍関係企業で、血液は日本赤十字社の独占事業になっていて制約の多い日本では、企業の関心は高くない。「厚生労働省など国の研究費が投入された人工血液を日本で生産し、世界中に輸出して役立てたいのだが…」と、グループの研究者は訴えていた。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

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