2024年 4月 27日 (土)

高橋洋一の自民党ウォッチ
見せかけの「公務員制度改革」 新しい組織作って焼け太り

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   公務員改革は廃案の歴史で、麻生政権時代の2009年、民主党政権時の10年と11年に提出された法案は、いずれもねじれ国会の中で成立しなかった。そして今回、衆参で過半数を持つ安倍政権でようやく実現するわけだが、蓋を開けてみたら、内容が大きく後退していた。

   第一に内閣人事局。かつての改革プラン(2008年基本法、2009年甘利法案)では、「内閣人事局」は、人事院、総務省等に分散された人事関連の機能を統合し、内閣主導の幹部人事を支えることのできる体制を作ることを目指していた。

人事院の機能を温存したまま

   2013年9月時点で政府が示した法案骨子では、09年甘利法案の「内閣人事局」関連部分どおりとされていた。ところが、政府の法案をみると、

   (1)任用、採用その他の事務につき、内閣人事局と人事院との間でそれぞれ焼け太りのための業務分担を設定、
   (2)幹部職員の級別定数の設定につき、内閣人事局の権限としつつも、「人事院の意見を尊重」との規定を追加、となっている。

   つまり、人事院の機能を統合して内閣人事局を作るのでなく、人事院の機能を温存したまま内閣人事局も作る形にすり替った。これは、新しい組織を作る焼け太りであり、人事機能の分散した無責任体制をさらに悪化させるだけになる。

   第二に幹部人事制度。幹部人事の一元管理のためには、幹部人事制度の改革が必要だ。

   現行の公務員制度では、次官・局長などの幹部職員も、係員レベルの職員と同じ身分保障の対象であり、まず免職も降格もされない。この結果、民間人や若手を幹部に起用しようとしても、幹部ポストにある職員の身分保障に阻まれ、結局、年功序列型の順送り人事によるしかなくなる。

   かつて、自民党が野党だった際には、「幹部公務員法案」を提出したこともあったが、今回は「幹部公務員法」がない。これでは不十分だ。

後退した甘い法案なのに、一部の幹部公務員から反発

   第三に国家戦略スタッフ・政務スタッフ。かつての改革プランでは、官邸に国家戦略スタッフ、各大臣のもとに政務スタッフをおき、重要政策の企画立案をサポートすることとしていた。また、人数にも制限を設けず、政権の判断で実効性のあるチームを形成できることとしていた。

   しかし、今回の政府案では、(1)国家戦略スタッフは既存の総理補佐官をもって置き換えることとし(増員なし)、(2)政務スタッフは、各省1人の大臣補佐官としている。政策の企画立案サポートは一定規模のチームで行うことが不可欠であり、これも不十分だ。

   第四に公募制度。かつての改革プランでは、公募制度の導入は、重要な柱のひとつと位置付けられていた。具体的な数値目標を定める等の規定を設けていた。しかし、今回の政府案では、これらの規定が削除されている。これでは、公募導入の推進は期待できない。

   第五に天下り・現役出向。政府案では、かつての改革プランにはなかった「人事交流の対象となる法人の拡大、手続の簡素化」という規定が盛り込まれている。

   2010年に民主党政権のもとで、いわば天下りに代わる抜け道として、現役出向を拡大する方針を示す「退職管理方針」が決定されたが、この規定は、同方針に沿って現役出向を拡大するための規定だろう。「退職管理基本方針」は、かつて野党時代の自民党から批判があったとおり、「天下り禁止」という第一次安倍内閣以来の方針を覆そうというものである。これでは、「天下り禁止」という方針に全く逆行することになる。

   こんなに後退した甘い法案なのに、それでも一部の幹部公務員から反発があるという。どうも病魔は幹部公務員に潜んでいるようだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。


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