2024年 4月 19日 (金)

高橋洋一の自民党ウォッチ
都知事選で「都が原発買い取り」議論せよ 「脱原発」への現実的な道筋が見えてくる

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   告示の前日になって、東京都知事選でようやく候補者の公約が出そろった。都知事選の争点にすべきでないという意見もあるが、原発への取り組み方はやはり一つのポイントだ。

   マスコミ報道の焦点となっている2人のうち、細川護煕氏は原発即ゼロ、舛添要一氏は脱原発。両者の違いは、今年(2014年)中に差し迫った再稼働を認めるかどうかの違いだ。マスコミは再稼働推進と再稼働反対に分かれて、それぞれの主張を繰り返している。推進派の論点は、当面のコスト高と将来的なエネルギー供給の不安だ。再稼働反対派は、要するに倫理として原発を許せないので即止めよという。両者の溝は埋めがたく、両者には妥協の余地はないように見える。

「年数」設定しないと、フェアな議論ではない

   ただし、当面の再稼働ではなく、将来の話にすると、妥協点は見えてくる。さすがに推進派の中でも、原発の新増設を積極的に認める人はあまりいない。となれば、40~50年後には原発ゼロと考えてよい。要するに、原発ゼロの到達年で考えると、今即ゼロの再稼働反対と将来ゼロの再稼働推進とに分けることができる。

   ただし、問題は、将来ゼロといいながらズルズルと原発を動かしつづけて、「原発ゼロ」が形骸化することだろうし、ゼロにしても、もう少し見えるところで年数を設定しないと、どんな立場にとってもフェアではない。

   ここで、一つ具体的な提案をしてみよう。いまある原発を東京都が買い取るのだ。東電の原発は、東電のバランスシートでは7492億円だ。この簿価で買うか、それ以下の「適正価格」で買うかのポイントはあるが、東京都にできない相談ではない。

「神学論争」避け、具体的な提案で結果を出すべきだ

   政治は結果を求める場だ。単に評論家のように原発再稼働すべきかどうかを議論しているだけではいけない。原発再稼働は神学論争になりがちなので、具体的な提案で結果を出すべきだ。そうでないと、税金を50億円も投入して選挙する意味がない。

   原発再稼働は、原子力規制委員会が審査し、地元自治体の同意手続きがある。この中に東京電力の柏崎刈羽原発6・7号炉が含まれているが、基本的には東京都知事の出る幕はない。泉田裕彦新潟県知事と共闘して、非同意に持って行く程度のことしかできないが、東京都が原発の所有者となれば、話は全く変わり、再稼働させないこともできる。

   しかも、この提案は、都知事の原発ゼロへの本気度を試すリトマス紙ともなりうる。例えば、買い取り価格をゼロにすると、東電は直ちに7492億円の損失となるので飲めない話だ。原発即ゼロも可能で勇ましいが、今の議論だけしているのと大差ない。逆に、買い取り価格を7492億円にすると、東電はやっかいな原発を万々歳で売却するだろう。しかし、これでは東電優遇という批判がでる。

   おそらく7492億円未満の「適正価格」で東京都が買い上げて、その後何年使うかで原発ゼロまでの年数をはっきり示すのが、国民、都民にとってベストなシナリオではないか。こうした具体論を言い出す候補が出てきてほしい。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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