2024年 4月 18日 (木)

女性付きまとい逮捕男は85歳 「高齢ストーカー」、なぜ急増?

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   奈良県内で一人暮らしをする80歳女性にストーカー行為をしたとして、和歌山県橋本市に住む無職の85歳の男が2014年6月10日、奈良県警によりストーカー規制法違反などの疑いで逮捕された。

   巷からは「85歳でストーカー!?」「元気だな85歳…」と驚きの声があがっているが、何も特別な事例ではない。近年ではこうした「高齢ストーカー」が急増しているのだ。

高齢の被害者も増加傾向に

年をとっても気持ちは衰えない(画像はイメージ)
年をとっても気持ちは衰えない(画像はイメージ)

   「老人の暴走」はこれまでにも度々報じられている。2009年4月には名古屋市の男(74)が約9000回にわたって知人女性(61)に無言電話をかけ、ストレスのため胃潰瘍にさせたなどとして、傷害と業務妨害の疑いで逮捕された。この男は約1か月前にも別の女性(61)に約6000回の無言電話をかけてうつ状態にさせたとして傷害容疑で逮捕されていたという。

   2010年11月には熊本市の男(82)が20代前半の女性会社員につきまとったとしてストーカー規制法違反の疑いで逮捕された。男は無職で、結婚歴がなく一人暮らしだったそうだ。

   急増の実態を示す資料もある。

   警察庁がまとめた統計データによると、2013年のストーカー認知件数は2万1089件で、うち男性が加害者になっているケースは1万8316件だった。年代別でみてみると、最多は30代の5377件で、全体の約4分の1(25.5%)を占める。以下、40代(4467件)、20代(4057件)と続き、20~40代だけで6~7割になっている。

   高齢者はどうかというと、60代と70歳以上を合わせても1919件で1割にも満たない。だが注目したいのは、その増加率だ。2003年の60歳以上の件数は473件。ここ10年で、なんと約4倍にまで増加している。ストーカー認知件数自体も10年前より増えているものの、他の年代をみてみると40代で2.6倍、30代で2.0倍、20代で1.7倍と、高齢者のみが顕著に急増しているのが分かる。

   高齢の被害者も増加傾向にある。13年では60代が552件、70歳以上が164件の計716件だったが、これは03年の約3.7倍、09年の約1.7倍にあたる。

専門家「退職で抑止力なくなり、孤独感も募る」

   近年、急増したのはなぜなのか。福山大学人間文化学部教授の平伸二氏(犯罪心理学)は「今の高齢者は高度経済成長を支えてきた世代。終身雇用のもと、仕事一筋で打ち込んできた人が多いです」と指摘した上で、退職による変化が影響しているとみる。

「まず『抑止力』がなくなることが挙げられます。会社などに勤めていればクビや降格を恐れてブレーキがかかりますが、リタイアすればそうしたリスクがなくなる。また、長く勤め上げた会社との絆が切れたことによる『孤独感』もあるでしょう。街や店に出かければ人はいるのに、自分の存在感を見出すことができない。そうした寂しさや孤独感からどこかに接点を求め、恋愛対象ができると過度に傾倒してしまう傾向にあると考えられます」

   退職後にともに暮らす家族がいないことも問題だ。家族の存在は会社に所属している時と同様、抑止力となるが、子供と一緒に住んでいる高齢者も最近では少なく、妻に先立たれて一人暮らしを余儀なくされている高齢者も増えている。そうした寂しさから、恋愛対象にのめり込んでしまうことも考えられる。

   報道によれば、奈良県警に逮捕された男も無職で「孤独」だったらしい。男が女性と知り合ったのは4年前のことで、妻が入院した際に相部屋だったことがきっかけだった。ストーカー行為が始まったのは妻が死去した後からのようで、女性宅に頻繁に押しかけるようになったという。男は1月にも同じ女性への脅迫容疑で逮捕されており、付きまといをやめるよう文書で警告もされていた。

   平教授は「ストーカー行為者を摘発するのはもちろんですが、高齢者を社会から孤立させないことも重要」と言う。今の高齢者は昔に比べて体力的にも余裕があり、知識や技術、意欲もある人が多い。その上で、地域社会に参画できる仕組みづくり、コミュニティづくりが防止につながるとみる。

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