「日中偶発軍事衝突」は起こるのか(9)
日本の悪口は中国の一般人の好みに合う だから紙面に日本の批判があふれる
香港フェニックステレビ、リー・ミャオ東京支局長に聞く(下)

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   日中共同世論調査では互いの国民に「良くない印象」を持つ人が9割を超え、両国の国民感情は過去になく悪化している。この世論を形成するのに大きな役割を担っているのがメディアだが、中国メディアは日本批判を強めるばかりで「悪循環」だという指摘もある。中国メディアが日本批判を続ける背景や、どうすればこの状況が改善できるかについて香港フェニックステレビのリー・ミャオ東京支局長に聞いた。

―― 東日本大震災発生直後にリーさんが生中継で涙を流して「どうして日本人のために泣くのか」と中国のネット上で非難されたことは有名です。一方、8月15日の靖国神社の取材では、罵声を浴びせられたり石を投げられたりしています。日中双方から非難されている形です。

リー: それでも、中立でなければならないと考えています。そうしなければフェニックステレビの存在意義はない。中立でなくて良いのであれば、国営メディアに行けばいい。ここは譲れない一線です。

「売国奴」といった罵倒ばかり

香港フェニックステレビのリー・ミャオ東京支局長は、「内圧」を制御する必要性を説いている
香港フェニックステレビのリー・ミャオ東京支局長は、「内圧」を制御する必要性を説いている

―― 2012年には石原慎太郎氏の会見で、尖閣諸島の中国名にあたる「釣魚島」という名称を使って質問したのに対して石原氏が反発し、口論に近い状態になりました。最近の例では、菅義偉官房長官の14年7月11日の会見で、単に「島」と質問していました。何か名称についてルールがあるのですか。

リー: できるだけ中立的な聞き方をしようと心がけていますが、視聴者には地名にこだわりを持つ人もいます。かつて官房長官会見で「尖閣諸島についてお聞きします」と質問したら、中国の視聴者から「なぜ『釣魚島』と言わないのか」と批判を受けました。正式なインタビューでは「釣魚島、日本ではいわゆる尖閣諸島と呼ばれている~」といった表現にしています。日本メディアでは「尖閣諸島(中国名・釣魚島)」と表記していますが、フェニックステレビは香港のメディアなので、これを逆に表記しているということです。

―― 石原氏とのやり取りでは、中国メディアから「愛国記者」として称賛されました。リーさんにとって歓迎すべきことでしたか。

リー: 「愛国記者」と呼ばれたのは、この時と、鳩山氏がインタビューで「中国側から見れば(日本が尖閣諸島を)盗んだという風に思われても仕方がない」と述べた時の2回だけで、それ以外は「売国奴」といった罵倒ばかりです。繰り返しになりますが、中立的に報じることを心がけているので、「愛国記者」になろうとしているわけではありません。

日中ともに「外圧」ならぬ「内圧」が強すぎ

靖国神社の取材では多くの日本メディアに取り囲まれた
靖国神社の取材では多くの日本メディアに取り囲まれた

―― 外交は世論に影響されますが、その世論への影響が大きい中国メディアの報道についてどう思いますか。中立に報じようとして批判されるフェニックステレビのようなメディアがある一方で、環球時報のようなメディアはひたすら日本批判を繰り返しています。

リー: 残念ながら、それが中国の実情です。日本の悪口を言うことは、一般国民の好みに合うことになるので、紙面に日本の批判があふれることになります。

―― 「近隣諸国の悪口を書けば視聴率や部数、ページビューが伸びる」という点では、日本も似たようなものです。

リー: しかし、大衆感情に流されていては悪循環が進むことになります。「言論NPO」が13年6月から7月にかけて行った日中世論調査によると、日本人で中国に対する「良くない印象」を持つ人が90.1%、中国人で日本に対する「良くない印象」を持つ人が92.8%と、いずれも9割を超えています。非常に深刻です。報道は非常に重要な役割を果たすはずなのですが、日中ともに「外圧」ならぬ「内圧」が強すぎで客観的な報道は困難さをともなう状況です。この「内圧」の問題を解決しないと両国間の好感度も回復できないし、相互理解も進みません。

―― リーさんは外交専門誌「外交」13年9月号に「中日の共通の敵『内圧』制御する3つの提案」と題して寄稿しています。この3つの解決策について教えてください。

リー: ひとつが、「新・愛国主義の育成」です。つまり、他者に寛容な、大国にふさわしい愛国主義を持てるようにすることです。少なくとも今の状態では、互いを非難してばかりの悪循環になるので、まずは客観的に冷静に相手を見ることから始める必要があります。

―― ツイッターを使うにしても、事実をちゃんと確認してから意見を言う、出典の怪しいツイートは拡散しない、といった基本が重要です。

リー: メディア関係者であれば、なるべく1次資料にあたる、当事者に確認するといった作業が必要です。

「ガセネタ」でも中国メディアは環球時報を追いかけざるを得ない

―― そういった確認作業があって初めて「ご意見」が言えるということですね。

リー: 残念ながら中国メディアでは事実関係を確認しないまま日本批判が展開されるケースがあります。例えばJ-CASTニュースが14年6月17日に「中国共産党系の環球時報が1面で大誤報 『自衛隊が宮古島にミサイル配備を完了』」という見出しで詳細に報じていますが、この環球時報の1面記事は全くの「ガセネタ」でした。しかし、環境時報は影響力が大きいので、中国メディアは追いかけざるを得ない。こういった全くの誤報が、中国国民の反日感情を加速させている面もあります。
   フェニックステレビでも、トップニュースで解説すべきか本社と私とで議論しましたが、記事に書いてある内容の裏付けが取れないので、他の中国メディアが追いかけていたとしても「正確さ重視で、やらない」という結論になりました。

朝日「防衛相『領空侵犯、信号弾で警告』」は問題記事だ

―― 二つ目として「中日討論会の定期開催」を提案しています。

リー: 討論会はフェニックステレビでも取り組みを進めています。日中の有識者を呼んでテレビで生討論する。13年9月に、日本側からゲストに来てもらって同時通訳付きで放送しました。自国で当然のように語られている主張を相対化して理解するきっかけになればいいと考えています。

―― 三つ目が「中日メディアの相互チェックの枠組み」。日中メディアがお互いに誤報を出し合っている感があります。日本では、誤報を指摘するサイト「Gohoo」が登場したりしていますが、習近平政権がメディア規制を強めている中国では、このような動きは難しいでしょうか。

リー: これは本当に難しい問題です。日本側の報道が問題になったケースでは、朝日新聞が13年1月15日にニュースサイトに「防衛相『領空侵犯、信号弾で警告』中国メディア質問に」という見出しで掲載した記事が代表的です。会見では小野寺五典防衛相は領空侵犯への対処方針が変わっていないことを一般論として述べたに過ぎず、「信号弾」や「警告射撃」といった単語も口にしていません。ですが、この朝日新聞の記事は、まるで日本が中国に宣戦布告したかのような印象を中国メディアに与えることになり、大騒ぎになりました。日中ジャーナリスト会議という仕組みはありますが、その中では互いの記事を検証するところまではできていません。

リー・ミャオさん プロフィール

りー・みゃお 香港フェニックステレビ東京支局長。中国吉林省出身、吉林大学日本語学科を卒業後、1997年に来日。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科で国際関係を学び、博士課程単位取得退学。国際放送「NHKワールド・ラジオ日本」中国語アナウンサーを経て2007年から現職。

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