2024年 4月 24日 (水)

「ろくでなし子」再逮捕は不当? ネット署名、抗議...アート関係者から異論続々

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   女性器をモチーフにしたアート作品で知られる「ろくでなし子」こと五十嵐恵容疑者(42)が2014年12月3日、わいせつ電磁的記録頒布などの疑いで警視庁により「再逮捕」された。

   同様の容疑で逮捕された今年7月には、「表現の自由と規制」、「『わいせつ』と芸術」といった視点から議論が巻き起こった。今回の再逮捕を巡ってもさまざまな意見があがり、ネットでの「即時釈放」署名は7000を超えている。

釈放トークイベントで女性警察官コスプレ

女性器をモチーフにした自作キャラクターの人形を手にする「ろくでなし子」こと五十嵐容疑者(2014年7月撮影)
女性器をモチーフにした自作キャラクターの人形を手にする「ろくでなし子」こと五十嵐容疑者(2014年7月撮影)

   7月の逮捕では、自身の女性器をスキャンして3Dプリンターで出力するためのデータを配布したとして「わいせつ電気的記録媒体頒布罪」の疑いが持たれたが、処分保留のまま釈放された。その後、五十嵐容疑者は逮捕の不当性をさまざまな場所で訴えてきた。

   釈放から1週間後には日本外国人特派員協会で会見し、「今回の私の逮捕は、こうした日本の性的なイメージに対するゆがみが現れたのではないか」などと語った。10月に行った釈放トークイベントには、女性警察官のコスプレ姿で登場。同月には「週刊金曜日」にて勾留体験を綴ったエッセイ漫画の連載をスタートさせた。

   そして12月、五十嵐容疑者は再び逮捕されることとなった。報道によれば、今回の逮捕容疑には7月時点とは別のわいせつ物頒布等容疑も含まれているという。

   また、「わいせつ物公然陳列」の疑いもかかっている。逮捕容疑は、同じく逮捕された作家の「北原みのり」こと渡辺みのり容疑者と共謀し、五十嵐容疑者が作った「わいせつ物」を渡辺容疑者が経営しているアダルトショップ(文京区)で13年10月~14年7月にかけて展示したというもの。

   五十嵐容疑者は「女性器はわいせつ物ではない」と容疑を否認し、北原容疑者は黙秘しているという。

「不当な理由で国民の平穏な生活を侵害することはやめてほしい」

   再逮捕は再び議論を呼ぶこととなった。「週刊金曜日」は3日、平井康嗣編集長の名前で抗議声明文を発表。五十嵐容疑者の作品群は「女性の性を商品化する『わいせつ』物を氾濫させている男性的な社会に対して疑義を唱える表現活動」と説明した上で「いまだに一連の作品を"刑法違反のわいせつ物"ととらえる警視庁の不勉強さにはあらためて残念な思いを抱きます」と批判した。

   また、同誌上での連載漫画が再逮捕のきっかけの一つになっている可能性にも言及し、

「警察や司法当局が自らの不都合な事実を隠ぺいするために、または報復的に、ろくでなし子さんの逮捕に及んだとすれば、これは自由な表現活動に対する重大な侵害と暴力行使でしかありません」

と続ける。そして「ともかく不当な理由で国民の平穏な生活を侵害することはやめてほしい。一刻も早く2人が釈放されること、そして強硬な捜査を取りやめることを強く、強く求めます」と訴えた。

   インターネット上でも逮捕を疑問視する声があがっている。署名サイト「Change.org」では、警視庁と東京地検に五十嵐容疑者の即時解放を求めるための署名キャンペーンが立ちあがり、5日17時時点で7000人以上が賛同している。

会田誠氏「負けた...」村上隆氏「ボコられてます」

   アートやサブカルチャー界隈からも2人の逮捕には批判的なコメントが出ている。編集者・写真家の都築響一氏は自身のメルマガのフェイスブックページに「おふたりともすごく強い信念のひとなので、こんなことで凹んだりはしないだろう。もし逮捕すればなんとかなると思ってるのなら、警察はずいぶん女をナメている」と綴った。美術評論家の樋口ヒロユキ氏も「しつっこいなあ、警察の人も。きらわれますよ」と呆れ気味だ。

   現代アートに造詣が深い脳科学者の茂木健一郎氏も3日、ツイッターでこの問題に言及。その中で

「アートにおける批評性、表現の自由を肯定的にとらえる人にとって、今回のろくでなし子さんの逮捕は、警察の誤判断だと映るだろう。一方、警察は、必ずしも文化的な感性の高い人の認識を基準に動くのではない。あくまでも、一般の人々の感覚、認識をもとに、判断をして動く」
「その意味で、今回のような事態が起こった時に問題になるのは、果たして、日本の社会の中で、アートのもつ批評性、表現の自由についての理解、合意がどの程度形成されているか、ということだろう。今回の警察の行為が社会通念と明白にずれているという判断は、残念ながらできそうもない」

との見方を示した。

   作品が「わいせつ」だとして物議を醸したことのある美術家らも反応している。

   会田誠氏は3日、「北原みのりさんが逮捕されたニュースに『負けた...』と思う僕の捻れた感覚を告白しておきます」とのツイートを投稿した。会田氏といえば2013年の「犬」シリーズを巡る抗議問題が記憶に新しい。森美術館で開催した個展で、四肢を切断され首輪に繋がれた全裸の少女がほほ笑む「犬」シリーズを展示したところ、市民団体「ポルノ被害と性暴力を考える会」が森美術館に抗議したのだ。

   精液を噴出する裸の青年のフィギュア作品「マイ・ロンサム・カウボーイ」などで知られる村上隆氏は、逮捕の是非の前に、この一件で「だったら村上氏の作品はどうなんだ」というようなばっちりを受けていることに困惑しているようだ。3日には「某氏の逮捕でまたもや村上ボコられてます」とツイートし、「某氏の表現と、ワシの表現のメッセージにはズレが有ります。ワシは日本人のエロに関して、語っており、某氏はジェンダー的な自由について語っておられると思うのです。向こうのほうが純粋な表現です」などと、五十嵐容疑者との作品表現における立場の違いを説明した。

   一方、こうした「専門家筋」の困惑や反発意見とは別に、ネットでは「逮捕されて当然じゃないの?」「そもそも生理的に受け付けない」などの声もある。

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