2024年 4月 27日 (土)

イスラム学者・中田氏、「仲介役」担うも交渉決裂?  後藤さんら人質事件でロイター報じる

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   過激派組織「イスラム国」による人質事件で、日本政府が「イスラム国」とどのように解放交渉を試みていたかについて、ロイター通信が報じた。

   日本政府は、表向きは「テロには屈しない」という姿勢を貫き、交渉の経緯も明かしていないが、記事によると、一時は「イスラム国」幹部と交流があるイスラム学者の中田考・同志社大学客員教授に「仲介役」を依頼していた。

日本政府からメッセージ託されていたが「イスラム国」に伝えなかった?

日本外国特派員協会で会見するイスラム学者の中田考・同志社大学客員教授(2015年1月撮影)
日本外国特派員協会で会見するイスラム学者の中田考・同志社大学客員教授(2015年1月撮影)

   ロイター通信は2015年2月9日未明(日本時間)、「急進派の学者が人質危機のピークで日本政府にイスラム国とのチャンネルを提供していた」と題した記事を配信した。

 

   中田氏や関係者の話、記録を検証した結果として、中田氏が、

「1月の危機のピーク時に、外務省からメッセージを集団(イスラム国)に伝達するように依頼された」

とする内容だ。ロイターは、日本政府が人質解放に向けて「イスラム国」と対話する用意があったように見えるという点で、「テロには屈しない」という表向きの方針と齟齬がある点も指摘している。

   「イスラム国」が72時間の期限を区切って身代金を要求した動画の存在が明らかになった2日後の1月22日、中田氏は東京・有楽町の日本外国特派員協会で開いた会見で、

「これまで、(自らが北大生に「イスラム国」行きを勧めた容疑で警察の捜査を受けているため)できる限り(「イスラム国」と)コンタクトをしないようにしていたが、コンタクトが取れることは確認している」
「日本政府から直接の要請は私にはない。しかし、コンタクトはないわけではない」
 

などと述べ、「イスラム国」との折衝に含みを持たせていた。

   ロイター記事によると、会見前日の1月21日に具体的な動きはあった。日本政府のテロ対策タスクフォースが、

「2人の日本国民に危害を加えず、直ちに解放することを強く求める」

とする「イスラム国」宛てのメッセージを、関係者を通じて中田氏に送ってきたのだという。だが、中田氏はこのメッセージを「イスラム国」側に転送すると「対話の意志なし」として人質が殺害されると考え、転送しなかった。その後、外務省からの状況確認はなかったという。

「イスラム国」司令官からは「条件が満たされることが重要」

   中田氏は1月下旬(late last month)、元々面識があったイスラム国司令官のウマル・グラバー氏と外務省との「仲介人」になったと説明している。その交渉内容も明らかにしている。

 

   日本政府は、「72時間」の期限を1月23日14時50分頃(日本時間)だとみていた。期限が近づいた1月23日の早朝4時半頃(同)には、ウマル氏は「ワッツアップ(WhatsApp)」と呼ばれるスマホ向けアプリを通じて

「残された時間は多くない。イスラム国は約束を実行するだろう」

という内容のメッセージを中田氏に送ってきた。当時、外務省は複数のルートから「イスラム国」への接触を試みていた模様で、ウマル氏は「交渉チャンネル」から得たという音声ファイルも中田氏に送ってきた。この音声ファイルでは、ヨルダンの日本大使館の外交官だと名乗る男性が、日本政府が人質の安全確保に「真剣」であることや、人質の氏名や生年月日を日本語で話していた。

   ウマル氏が音声ファイルの信頼性について尋ねてきたため、中田氏は外務省のテロ対策タスクフォースの責任者に連絡を取った上で「信頼できる」と返信。ウマル氏からは、さらに「イスラム国の条件が満たされることが重要だ」と返信があったという。

   ウマル氏が人質の処遇に関してどの程度の権限を持っていたかは明らかではない。湯川遥菜さん(42)が殺害されたとみられる写真の存在が明らかになったのは、1月24日23時頃(日本時間)だった。後藤健二さん(47)の殺害も、 2月1日早朝(同)に明らかになった。

   それ以来、外務省から中田氏に確認を求める連絡はなく、ウマル氏とも連絡は途絶えているという。

   記事では、

「(日本政府が)やはりイスラム国からの人質解放を目指すヨルダン政府と独占的に協力することを決めたため、中田氏経由の連絡手段が閉ざされたばかりでなく、(イスラム国と)後藤健二さんの妻との間に開かれていた別の接点も実質上なくなってしまった」

   と分析。その中で、

「日本政府のために働いていた警備コンサルタント会社、CTSSジャパンのニールス・ビルト社長は『政府は使えたはずの私的な対話チャンネルを脇に追いやったが、ついに最後の最後まで武装グループと有効な接点を持つことができなかった』と話した」

という記述もある。仮にこの記述が事実であれば、日本政府は今回の人質事件で外部企業の協力を仰いでいたことが初めて明らかになったことになる。

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