2024年 4月 20日 (土)

「オープンイノベーション」に乗り遅れるな! トヨタに続きパナソニックも特許を無償化へ

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   自社の特許などを公開し、他社を巻き込んで新たな市場を開拓する「オープンイノベーション」と呼ばれる技術革新が注目されている。パナソニックはインターネットに接続できる家電など「モノのインターネット(IoT)」と呼ばれる分野で、保有する関連特許を無償化するという。自社の特許を他メーカーに利用させることで、新たな製品開発やサービスで主導権を握る狙いがあるとみられる。

   メーカーの特許をめぐってはトヨタ自動車が2015年1月、燃料電池車の関連特許を無償化すると発表したばかり。これまで自社開発にこだわり続けた日本企業だが、ここに来て欧米が先行するオープンイノベーションに追随せざるを得ない事情があるようだ。

  • 他社を巻き込み、市場開拓(画像はイメージ)
    他社を巻き込み、市場開拓(画像はイメージ)
  • 他社を巻き込み、市場開拓(画像はイメージ)

これまで自社グループ内で完結

   日本企業は1980年代から1990年代にかけ、ソニーのウォークマン、トヨタ自動車のプリウスに代表されるような革新的な商品を開発し、もの作りで世界をリードしてきた。これは研究開発から商品化、市場開拓まで自社グループで行う垂直統合型の技術革新で、クローズド(閉鎖された)イノベーションと呼ばれるビジネスモデルだ。トヨタなど一部の日本企業は現在も強い技術力を維持しているが、電機業界やIT業界では日本企業が技術革新で遅れをとり、グーグルやアップルなどの後塵を拝している。

   これは日本企業が自社開発した特許などの囲い込みに走り、世界的な潮流となったオープンイノベーションの流れに乗り遅れたことが要因のひとつという。「日本企業は従来から米国と比較してITを戦略的に活用する意識が弱い」とされるが、あらゆる情報がデジタル化され、インターネットを通じてつながるIoTが実現すると、車や家電などがネットワークにつながり、そこから収集されるビッグデータを活用することで、様々な新商品やサービスの誕生が期待される。しかし、「先端技術ほど市場が見えにくく、必要な補完技術もわかりにくい。事業化プロセスをいかに時間短縮できるかが成功の鍵を握る」という。

   そこで期待されるのがオープンイノベーションだ。企業が自社開発の技術だけでなく、他社の特許やアイデアを組み合わせることで、革新的で新しい商品やビジネスモデルを創り出すことができるからだ。特許を公開するだけでなく、大企業がアイデアや技術力のあるベンチャー企業や大学などと組み、新たな発想を取り入れることも技術革新だ。

欧米の大企業は積極的

   欧米ではIBM、インテル、フィリップス、シーメンス、ユニリーバ、P&Gなど旧来からある大企業がオープンイノベーションで技術革新に成功した先例として知られている。「欧米の大企業は積極的にベンチャー企業と協業し始めている。共同開発契約を結んだり、知的財産のライセンスを結んだり、直接投資を行ったり、ベンチャーを買収したりしている」という。

   日本もこの動きに遅れまいと必死だ。安倍晋三首相は「チャレンジ、オープン、イノベーション。これが私の成長戦略の一貫した基本理念だ」と述べ、オープンイノベーションをアベノミクスの成長戦略のひとつに位置づけている。

   しかし、オープンイノベーションで成果を出すには課題も多い。トヨタが燃料電池車の特許を無償で公開しても、その特許を活用して参入するだけの資金や技術を持ったメーカーは世界的に限られるだろう。「シリコンバレーのように、大手企業と組めるだけのアイデアや技術力のあるベンチャー企業も、残念ながら日本国内には少ない」(IT業界関係者)という事情もある。

   シャープやパナソニック、日立製作所など大手企業は社内にオープンイノベーション推進室などの専門部署を続々と設けている。専門家は「本社がすべてをコントロールしようとする中央集権型の日本企業の体質は、イノベーションの実現を妨げる可能性があり、変革が起こりにくい。日本企業は顧客を非常に大切にするため、結果として新しい顧客層に目が向かない傾向がある」と指摘する。

   とはいえ、日本でも富士フイルムのように旧来のビジネスモデルから脱却し、技術革新に成功した企業もある。「主力のフィルムビジネスが有望でないことに気付き、医療関係など新しいビジネスに踏み切った富士フイルムと、フィルムにこだわり続けて倒産した米コダックは対照的だった。長い目で企業の将来を見つめ、必要な改革を行うことが重要だ」と専門家は指摘している。

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