2024年 4月 28日 (日)

日韓首脳会談が一部日本メディアに「筒抜け」の裏事情 韓国メディアは、なぜ裏が取れないのか

   安倍晋三首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の間で初めて行われた日韓首脳会談も報道をめぐり、韓国メディアから日本側に対する批判が出ている。非公開のはずの会談内容を日本政府が次々にメディアにリークし、「言論戦」を仕掛けている、というのだ。

   仮に「非公開」で合意された内容を会談の出席者が外部にリークしたとすれば、会談相手との信頼関係に影響しそうなものだが、表向きは「非公開」とされている内容でも、実際は何らかの形でリークされて記事になるのが日本の政治報道の常でもある。韓国では、特に大統領をめぐる報道ではそういったことは珍しいようで、両国の文化の違いが表面化したとも言える。

  • 日韓首脳会談のやり取りをめぐる報道が問題になっている(写真は首相官邸ウェブサイトから)
    日韓首脳会談のやり取りをめぐる報道が問題になっている(写真は首相官邸ウェブサイトから)
  • 日韓首脳会談のやり取りをめぐる報道が問題になっている(写真は首相官邸ウェブサイトから)

読売と日経を引用する聯合ニュース

   首脳会談は1時間程度の少人数会合、45分間の全体会合の2段階にわたって行われた。両国は会談後、いわゆる従軍慰安婦問題について「できるだけ早期の妥結を目指して、交渉を加速させていくことで一致した」などと記者団に説明。両国政府の説明内容に大きなブレはなく、会談での具体的なやり取りの内容は明かされなかった。

   ところが、小人数会合でのやり取りの内容が日本で報じられているとして、韓国メディアで問題になっている。

   11月10日付の読売新聞によると、安倍首相は冒頭、

「日本国民が慰安婦問題で感じていることを率直に言わせてもらう。大統領も正直に話してもらっていいので、(話した内容は)口外しないことにしませんか」

と切り出し、

「法的な問題が決着した後も、人道的観点から色々と取り組んできた」

などと述べた。これは、1965年の日韓請求権・経済協力協定で法的な請求権の問題は「完全かつ最終的に解決」した後も、官民ファンドの「アジア女性基金」を通じて元慰安婦の女性に「償い金」を支給してきたことを指す。これに加えて安倍氏は「ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像を撤去することも求めた」という。

   朴氏は

「被害者が受け入れることができ、私たち国民が納得できるレベルで早急に解決しなければならない」

と応じたとされる。

   これに先立つ11月7日付の日本経済新聞でも、かなり具体的なやり取りが登場する。読売と同様、請求権の問題は譲れないという立場を繰り返したことが分かる。

   「韓日関係の最大の障害物だ」。朴氏は慰安婦問題への思い入れをぶつけ、『韓国の国民が納得できる水準で解決したい』と迫った。安倍首相も譲らない。元慰安婦の支援団体などが求めてきた法的責任は解決済みで『できないことはできない』と拒んだ」

「会談で(編注:安倍氏は)朴氏を見据え『我々できっちり最後にしましょう』と呼びかけ、朴氏も『この記念すべき年ですし』と応じた」

日本側出席者は首相、外相、官房副長官、NSC局長

   韓国メディアでは、両紙の報道を引用しながら韓国側の反応を伝えている。聯合ニュースによると、こういった報道について韓国政府は「『事実とは距離がある』と表明する程度の消極的な対応」だといい、

「日本政府が自分たちに都合がいい内容を中心にマスコミに公開し、それが既成事実として受け止められる側面を無視することができない状況」

だと解説している。大手通信社の「ニュース1」では、日本政府が「言論戦」で世論をリードしていると指摘しながら、

「対外的に明らかにしないことで合意した内容を公開すると、国際社会からどう見られるか。日本が自ら恥をかくことになるのではないか」

などと反発する韓国政府関係者の声を紹介。その上で、

「韓国政府としては、明らかにしないことで合意した事項を公開することもできず、そうかと言って日本側の言論戦を眺めてばかりいるわけにもいかない困難な状況に置かれている」

などと分析している。こういった状況について、韓国側が「外交チャンネルを通じて日本側に問題提起をした」とも伝えている。

   日本外務省の発表によると、少人数会合には両首脳以外に日本側は岸田文雄外相、萩生田光一官房副長官、谷内正太郎国家安全保障局長が出席。韓国側からは李丙琪(イ・ビョンギ)大統領秘書室長、尹炳世(ユン・ビョンセ)外相、金奎顕(キム・ギュヒョン)青瓦台(大統領府)外交安保首席秘書官が出席した。

李大統領の竹島訪問でも日本メディアが先行

   韓国大統領の動静をめぐって、日本メディアの報道が先行することは、これが初めてではない。2013年8月10日の李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)の竹島(韓国名・独島)の上陸がその一例だ。

   複数の日本メディアは8月10日未明、「複数の日韓外交筋」の話として、8月9日に韓国政府が竹島訪問を日本政府に通告したことを報じた。このことで李氏の竹島訪問計画が明るみに出た。

   ところが、聯合ニュースが8月10日午後に配信した記事は、この「日本政府に通告した」という報道を青瓦台(大統領府)が「全面否定した」と報じたものだった。その間、韓国メディアは蚊帳の外に置かれるという奇妙なことが起こっていたことになる。

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