北陸新幹線「敦賀」以西ルートは5案乱立へ 参院選前の決着めぐり「我田引鉄」の混迷

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   北陸新幹線の敦賀(福井県)から先の大阪までの延伸区間について、2016年に入り、議論が風雲急を告げている。事業を担うJR西日本が1月末、福井県小浜市と京都駅を結んで新大阪駅につなぐ独自案を与党プロジェクトチーム(PT)に提示。関西の8府県・4政令指定都市が地方自治法の規定に基づいて組織する関西広域連合(連合長・井戸敏三兵庫県知事)は「米原ルート」を優位とする広域連合の提案を白紙に戻した。

   「小浜~京都ルート」が有力になったと思えなくもないが、逆に関西国際空港までつなげる案も浮上するなど、従来の3案が5案乱立の状態になり、一層混迷してきたとの見方も出てきた。与党は参院選を前にした5月をめどに候補を絞り込む方針だが、多くの自治体の利害が絡んで調整は難航必至だ。

  • 北陸新幹線をめぐる新たな「我田引鉄」合戦が始まっている(写真は2015年2月撮影)
    北陸新幹線をめぐる新たな「我田引鉄」合戦が始まっている(写真は2015年2月撮影)

JR西の「小浜―京都」提示で「敦賀―米原」が白紙に

   北陸新幹線は金沢まで開通済みで、金沢―敦賀間も建設中だが、敦賀以西の近畿圏につながるルートは決まっていない。与党PTが検討していたのは、①敦賀から琵琶湖東側を通って米原駅で東海道新幹線につなぐ「米原ルート」(広域連合の試算で約44キロ、建設費5100億円)、②琵琶湖の西を通る「湖西ルート」(同約81キロ、7700億円)、③小浜市から新大阪駅に直接向かう「小浜ルート」(約123キロ、9500億円)――の3案。広域連合は2013年4月、工期や建設費の面で米原が「最も優位」として国に要望した。

   だが、2016年の年明けから議論が急展開。大阪府の松井一郎知事は1月21日の与党PTに出席し、「米原ルート」にこだわらない考えを表明。JR西日本が26日、与党PTに第4案となる「小浜・京都ルート」を新たに要望。広域連合は28日、JR西日本から説明を受けたのち、「米原ルート」を推すことを撤回した。

   JR西日本は従来の3案の建設費や所要時間、経済効果などを検討する過程で、昨夏に「小浜・京都ルート」という新たなオプションを提示していた。今回、与党PTに意見を求められて正式に示したもので、京都・北陸間の利用客の多さ、新大阪まで乗り換えがないなどが利点とされる。一方、米原ルートについては、「乗り入れる東海道新幹線のダイヤの問題や、システム統合など技術的課題がある」(来島達夫副社長)と複数の難点を挙げている。

地元国会議員が「舞鶴―京都―関空」新提案の観測

   さらに、広域連合は今後、案を一本化するのが難しくなったという見方が広がっている。三日月大造滋賀県知事は「課題となる点を含めても、費用対効果や開業までの時間で『米原ルートが最も優位』と言い続けていく」と、米原ルート推進の立場を変えない一方、大阪府は「決定権を持つ国に任せればいい」との立場を示すなどバラバラで、広域連合長の井戸兵庫県知事も、広域連合として「(米原ルートを推す方針を)堅持する状況ではなくなった」だけでなく、新たに支持するルートを決める可能性も「極めて低い」と言っている。

   加えて、「第5の案」も浮上している。京都府選出で与党PTの委員長を務める西田昌司参院議員が、京都府舞鶴市から南下して京都駅を経由し、関空までつなぐ独自案をPTに提案する見通しとされ、山田啓二京都府知事がこの案を評価、京都財界も同調して推す形になりつつあるというが、「小浜・京都ルート」より建設距離が長くなるのでコストが膨らむ。

「並行在来線」の第3セクター化でも利害錯綜

   今後、従来の3案と「小浜・京都ルート」、「西田案」の5案の綱引きが始まる。運行を担うJR西日本が提示した「小浜・京都ルート」が有力な選択肢に浮上したのは間違いないが、それでスンナリいくほど簡単ではなさそう。

   例えば、新幹線開通に伴い「並行在来線」はJRから切り離して第3セクターにすることになり、どの線を切り離すかという新たな問題も生じる。並行在来線は、「米原ルート」ならJR北陸線、「小浜・京都ルート」になるとJR湖西線になるという。「地域の足」に関わり、自治体が赤字補てんなどの負担を背負うことになるだけに、この点でも利害が錯綜する。

   そもそも、敦賀以西の財源が現時点では確保できていない。国土交通省は着工の条件として、安定的な財源の見通しや収支の採算性、投資効果などを挙げている。しかし、「与党PTがルートの絞り込みを急ぐのは、参院選向けに有権者にアピールするのが狙いでは」(JR関係者)と、拙速を懸念する声も出ている。

   「我田引水」ならぬ「我田引鉄」は政治家を巻き込んだ争いを生んできた。選挙が近づくにつれ、北陸新幹線をめぐる利権争いは、各自治体を巻き込んだ迷走状態に入る可能性もある。

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