高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
安倍首相「真珠湾訪問」の意義 「ドレスデンの和解」との関係

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   安倍首相は、2016年12月26、27日にハワイ真珠湾を訪問する。今年5月、オバマ大統領が伊勢志摩サミットの際に広島平和記念公園を訪れ、原爆慰霊碑に献花したことは記憶に新しい。そのときから、安倍首相の真珠湾訪問は時間の問題であったとはいえ、今年中に実現するとは、安倍首相の外交勝利と、日米から評価する声がでている。

   「年明け『真珠湾解散』説 安倍首相がにらむハワイ訪問の先」(J-CASTニュース、12月6日配信)という話もでているが、衆院解散という観点からいえば、もういつあっても不思議ではない。

  • 安倍首相、「真珠湾訪問」の意義とは(2016年6月19日撮影)
    安倍首相、「真珠湾訪問」の意義とは(2016年6月19日撮影)

どのような争点であっても解散になり得る状況

   解散・総選挙は、与党が相対的に有利になるような状況で行われる。蓮舫民進党は、期待された蓮舫人気が出ずに、逆に二重国籍問題で悪いイメージが強くなってしまった。

   国会での党首討論をみても、TPPやカジノ法案でも民進党は攻めあぐねている。安倍内閣の支持率も高いので、今の蓮舫体制のうちに、安倍首相は解散を打ちたいに決まっている。今、臨時国会の中でも、虎視眈々と狙っているはずだ。この意味で、どのような争点であっても解散になり得る状況だ。

   そうした下世話なことを抜きにして、今回の安倍首相の真珠湾訪問の歴史的な意義を考えてみよう。その意味を考えるためには、どうしても「ドレスデンの和解」に言及せざるを得ない。

   筆者には忘れられない思い出がある。筆者が官邸参事官として安倍第1次政権で働いていたとき、2007年7月の参院選の前の党首討論において、当時の民主党小沢一郎代表は、アメリカなどによる(ドイツ)ドレスデン大空襲について「アメリカは謝罪している」と発言した。ドレスデン和解は、戦争責任も謝罪もなく、敵と味方がともに犠牲者を追悼するという欧州型戦後処理の典型例であったということを筆者も知っていたが、当時の安倍首相も「謝罪している」は、事実でないと言っていた。

ヨーロッパ型和解

   党首討論用の想定問答は筆者が作成していたので、資料も添付して、詳細な反論を用意した。それを一部再現すれば、

「小沢代表の話に、明らかな事実認識の間違いがあった。アメリカは第2次大戦中のドレスデン爆撃についてドイツに謝罪した事実はない。ドイツはアメリカに謝罪は求めていない。アメリカとドイツの間では、ドレスデンの問題は、謝罪の問題ではなく、和解の問題として考えられている。小沢さんは『和解』という歴史問題克服の努力を全く理解せず、日本政局に利用した。政局利用のための、付け焼刃的な生半可な知識で、他国の歴史和解の努力を曲解するのは、現に慎むべきだ」

とある。

   歴史認識では重要な問題なので、民主党小沢代表の誤解は決定的ミスであったが、筆者の記憶では、当時のマスコミは安倍政権を攻撃できるなら何でもありで、小沢氏の事実誤認をどこも報道していない(当時の塩崎恭久官房長官が、会見で『(米国が)謝罪した事実はない』と述べた事は、NHKなどが報道)。安倍首相は、民主党代表が事実誤認をしたこと、ヨーロッパ型和解が望ましいことをその当時から分かっていた。

   アジアでは、中国と韓国のように、日本に対して戦争責任を主張し、まず謝罪せよとの、古いタイプの言い方が今でもまかり通っている。それが、今(2016)年は、日本だけがいち早くヨーロッパ型の和解(戦争責任・謝罪なしで、ともに追悼)を取り入れた記念すべき年になるだろう。

   安倍首相は、歴代首相の誰よりも外交に力を入れている。延べ訪問国数は100を超え、歴代トップである。そこでの思いは、戦後を終わらせることだ。第1次安倍政権の時、「戦後レジームの総決算」という言葉が使われていたが、今は使われていない。口の言葉よりも行動して実践しているのだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「これが世界と日本経済の真実だ」(悟空出版)など。


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