みんなどんどん辞めていく!保育・介護・公共工事「現場」に広がる労働崩壊!

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   京都府の公的保育所でこれまで勤めていた保育士全員が雇い止めとなり、新たな保育士に入れ替わる事態が起きた。財政削減の一環での民間委託となり、給料を下げるための「解雇」だ。似たような事例は全国で多発している。なぜ公共サービスの労働環境が厳しくなったのか。

   地方自治総合研究所研究員の上林陽治さんは、2001年以降、国が推し進めてきた構造改革が引き金になったと指摘している。小泉内閣の総合規制改革会議で、公営保育所の運営費が高いと指摘され、人件費の抑制を目的に民営化促進が決まった。株式会社も次々に参入し、民営化や民間委託が進められた。その結果、01年には1万2000以上あった公立の保育所は14年には9900程度に減り、9800程度だった私立が1万5000程度に急増した。保育所の平均賃金は下がり、いまはおよそ21万円。低賃金を理由に離職する人が後を絶たない。

   上林研究員「賃金が安かったり、場合によっては途中で雇い止めになったりすると、そこで働き続けるという意思を持っていたとしても、働き続ける意思をくじかれていきます。保育サービスという産業が維持できるかどうかという瀬戸際にあります」

低賃金・過酷勤務の「労働ダンピング」

   保育サービスばかりではない。財政削減に伴う「担い手不足」が最も深刻なのは公共工事の現場だ。建設業界では、賃金低下や雇用条件の悪化が続いてきた影響で若年労働者が急速に減少している。29歳以下の労働者は全体の1割まで落ち込み、技能の継承が難しくなっている。

   国が公共工事の実態を調査したところ、全国の自治体の4割以上が国が定めた適正な予定価格を違法に切り下げていたことが明らかになった。当然、しわ寄せは下請け企業に行き、賃金はどんどん下げられる。公共工事を50年近く請け負っている建築会社経営者はこう言う。「公共工事は儲からないと思いますよ。信じられない金額で(請け負うから)赤字になっちゃう」

   この会社がある公共工事について、「採算がとれる」と見積もった額は2100万円だったが、1500万円で別の業者に落札されてしまった。「何しろ『安く、安く』だから、泣いている下請けは結構いますよ。若い人を育てる人材育成にはやっぱりちゃんとした、食べていかれるような価格を出してもらわないと。このままいったのでは建築業も無理だと思いますね」

   国谷裕子キャスター「公的なサービスの分野では、これまで『効率化』『無駄を省こう』と繰り返し言われてきたわけですが、何が間違ったのでしょうか」

   雇用と人材育成の問題を研究を続けている中京大学の大内裕和教授はこう解説する。「コストの削減が行き過ぎて、安心・安全のコストを考慮しない、ひたすら賃金を考慮しない労働ダンピングを引き起こしているのです。雇用の劣化が、保育の質や建物の安全性など公共サービスの質そのものを低下させている。効率化の行き過ぎによって、食べられない賃金とか、人が育たない労働環境が生まれているのです」

東京・多摩市など「公契約条例」公共サービス事業に独自の最低賃金規定

   公共サービスを担う人たちの適正な賃金とは何なのか。東京都多摩市は2011年に「公契約条例」を成立させた。公共サービスを担う人たちの賃金や労働条件を守るため、職種ごとに適正な時給が細かく定められている。公共事業を受注した業者は、この基準を上回る賃金を支払わなければならない。同様の条例を定めている自治体は16市区に及ぶ。

   国谷「民間の仕事に『官』が介入しているという声も聞こえてきそうですが、この動きをどう見てますか」

   大内教授「行き過ぎた市場化、行き過ぎた民営化に規制を掛けることが大事です。賃金の上昇は労働者の可処分所得を増やしますから、地域経済を活性化し、内需拡大も加速させます。また、結婚できる、子育てできる労働条件は若い人たちの選択肢を増やしますから、地域社会を活性化させるでしょう」

   小泉内閣の旗印だった「構造改革」のツケが国民に回ってきたということだ。

ビレッジマン

*NHKクローズアップ現代(2016年2月22日放送「広がる『労働崩壊』~公共サービスの担い手に何が~」)

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