2024年 4月 25日 (木)

化学業界

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

現状

アジア向け輸出増加で業界上向く

  石油化学製品の2001年の出荷額は7.6兆円に達し、プラスチック製品や合成繊維・化学繊維などの関連製品まで含めると合計で23.2兆円に達する。
  石油化学製品を代表するエチレンの国内生産を見ると、2000年に761万トンのピークをつけた後は、低迷が続いている。02年には715万トンまで低下した。しかし03年には自動車向けなどを中心に国内需要が上向いたことに加えて、中国などのアジア需要の拡大により輸出が増加した。その結果、国内の総生産量は736万トンにまで回復した。02年末の国内エチレンの生産能力は760万トンと推計されている。日本国内の内需は547万トンにすぎない。生産能力の余剰分は現在、海外向けで補う形になっている。

ハイテク分野の拡大に力注ぐ

  こうした化学業界をリードするのが、業界のビッグ3と言われる三菱化学住友化学工業三井化学だ。三菱化学はゲノム(遺伝子情報)を産業分野に応用し、ゲノムに基づく創薬をすることで、医薬品事業の強化を狙っている。住友化学は液晶カラーフィルター、三井化学はプラズマディスプレイパネル用フィルターなどハイテク素材分野の拡大に力を注いでいる。
  3強以外では、信越化学工業 が建材などに使用される塩化ビニール樹脂、半導体に使用されるシリコンウエハー、光ファイバーの中間素材であるプリフォームに経営資源を集中させている。東ソー も他社との事業統合を通じて塩化ビニール事業の規模を拡大中だ。  昭和電工 は電子・電子材料・特殊化学品の育成を積極化し、大幅な事業再編を実施中である。

歴史

石油化学コンビナートが形成される

瀬戸内海に面する三井化学岩国大竹工場
瀬戸内海に面する三井化学岩国大竹工場

  化学業界は石油化学業界とも呼ばれている。化学製品は、石油を原料にして作られるものが多いからだ。
  まず原油からナフサが作られる。このナフサを原料にして、エチレンやプロピレンなどの基礎製品が作られる。この基礎製品から、ポリエチレン、塩化ビニール、スチレンモノマーなどの誘導品が作られる。そして誘導品を加工して、自動車のバンパーや、テレビ、冷蔵庫の構造体や、住宅のパイプなどの材料となるプラスチック加工品が作られているという流れだ。
  これら一連の製造工程を効率的に行うために、各種の工程を受け持つ企業が1箇所に集まって、石油化学コンビナートを形成した。そのような巨大コンビナートが、千葉県、神奈川県、三重県、岡山県、山口県、大分県など全国に散見される。

高度成長の終りとともに再編が進む

  鉄鋼とともに日本の“重厚長大”産業の代表格であった化学産業だが、高度成長の終焉とともに、系列を超えた事業提携や過剰設備の統合などの再編を余儀なくされた。 たとえば三菱化成と三菱油化は、1994年10月に合併して三菱化学となった。三菱化学は東京田辺製薬と99年10月に合併した後、医薬品部門を分社して三菱東京製薬が誕生した。三井石油化学と三井東圧化学は97年10月に合併し、三井化学となった。
  ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂などでも、製品分野に限定した子会社を設立するなど、事業を統合する動きが相次いだ。
  95年7月には昭和電工と日本石油化学がポリエチレンとポリプロピレン事業を統合し、共同出資の日本ポリオレフィンを設立した。三井石油化学工業と宇部興産も同月にポリエチレン事業を統合して、グランドポリマーという会社を設立した。これを受けて96年5月には、三菱化学と東燃化学がポリエチレンとポリプロピレンの事業を統合した。
  98年10月には三菱化学と旭化成(現・旭化成ケミカルズ)がポリスチレン事業を統合している。99年4月には、電気化学新日鉄化学ダイセル化学がポリスチレン事業を統合して東洋スチレンという会社を設立している。99年7月には、住友化学と三井化学がABS樹脂事業を統合した。

将来を展望するための3つのポイント

ポイント1
関税引き下げというハードル乗り越えられるか

  化学業界には従来から、2004年問題と2006年問題が控えていると言われてきた。石油化学製品の国内需要は、2000年頃から下降に転じている。そこで発生した余剰製品をアジア諸国などに輸出する形で、工場の稼働率を何とか保ってきた。しかし最近そのアジア諸国、特に中国では欧米の有力化学メーカーが生産拠点を移転しており、日本からの輸出が難しくなっている。

  それに追い討ちをかけたのが、2004年問題だ。これは、ウルグアイ・ラウンド(関税及び貿易に関する一般協定による多角的貿易交渉)の合意により、日本は石油化学製品の関税率を2004年までに段階的に引き下げることになった。2004年には欧米と同じ水準である6・5%まで引き下げることが約束された。こうした関税の引き下げ措置によって、国産品の1~2割は、輸入品にシェアを奪われるのではないかという観測が強まっていた。実際、日本メーカーと外資との競争は、折からの円高への進展ともかさなってかなりの激しさを増しているようだ。

ポイント2
日本からの輸出、続けられるか

  これに追い討ちをかけるように、2006年問題も業界関係者にとっては頭の痛い問題となっている。2006年問題とは、2005~2006年にかけて、BASFブリティッシュ・ペトロリアムなどの欧米メーカーが、中国や中東でエチレンの大型プラントを稼動させる予定で、それがもたらす需給関係の悪化が日本メーカーを価格面でも、量的な面でも直撃するのではないかと見られている。

  2005~2006年に立ち上がる能力の増加分は、エチレン供給量にして約800万㌧といわれている。これは、日本の年間生産量を軽く上回る水準である。  そうでなくても日本は国内の能力過剰部分を、海外への輸出に依存している状況だ。中国や中東での生産が予定通り立ち上がれば、日本からの輸出がそれだけ難しくなる。国内の過剰設備問題が深刻化するのは必至だ。これが2006年問題の本質である。

ポイント3
同じ領域での部分統合が主流になる可能性

  こうした事態に備えるために、化学各社は生き残りをかけた事業統合や再編へ向かう可能性が高い。 03年10月に予定されていた住友化学と三井化学との事業統合は、統合条件での折り合いが見られず、事実上の破談となった。医薬や農薬などファインケミカルに強い住友化学と基礎化学品に強い三井の組み合わせは、統合による相乗効果が大きいものと期待されたが、見送りとなったことで業界再編の動きは一時的に水を差された格好になった。最近のIT関連向け素材の出荷が好調で業績が持ち直してきたことから、不利な条件で何も事業統合する必要がないという判断が働いたためと見られる。
  しかし、海外での巨大プラントの立ち上がりは避けて通ることができない事態である。日本企業にとって過剰設備の解消、すなわち再編の流れは不可逆的と見られる。
  今後の業界再編は、流産した住友化学と三井化学の統合のような会社単位での事業統合というよりは、1990年代に見られたような同じ事業領域での部分的な統合が主流となって進む可能性が高い。

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中