2024年 4月 25日 (木)

エネルギー

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現状

自由化や経済の長期低迷で電力の販売量は毎年減少

東京電力の富津火力発電所(千葉県)
東京電力の富津火力発電所(千葉県)
 

  日本の電力業界は、東京電力関西電力など大手電力10社による地域独占体制が続いてきた。しかし1995年に始まった電力自由化は、2000年3月には全需要の約3割に相当する大口顧客向けの自由化にまで進展し、今後も段階的に自由化の範囲が拡大されていく予定だ。2007年からは、一般家庭向けの小売自由化もスタートする。

  こうした自由化の背景には、国際的な水準から大きくかけ離れている割高な日本の電力料金を、自由化(=競争原理の導入)を通じて欧米の水準まで引き下げようと言う政治的な意思が働いている。すでに、三菱商事系のダイヤモンドパワーNTTファシリティーズ東京ガス大阪ガスなどが出資するエネット、それに鉄鋼メーカーの新日本製鉄などが電力の小売事業への参入を果たしている。

北アルプスを望む東京電力高瀬川ダム
北アルプスを望む東京電力高瀬川ダム

  一方、受けて立つ側の電力会社では、電力自由化の本格化や経済の長期低迷、省エネの浸透などで電力の販売量は毎年減少傾向を示しており、業績は苦戦を強いられている。
  東京電力の2004年3月期の業績は、料金の値下げや冷夏、暖冬などが重なり、連結決算売上高は前年同期比1.3%減の4兆8538億円、営業利益は同6.2%減の4890億円、純利益は同9.5%減の1495億円と、いずれも減少となった。

ガス業界も規制緩和で競争の荒波にさらされる

  ガス業界も、規制緩和が加速し、競争の荒波にさらされている。
  ガス業界の主要な構成メンバーは都市ガス業者である。東京ガス、大阪ガス、東邦ガス西部ガスの大手都市ガス4社が全体の販売シェアの約8割を占める。しかし最近では、発電燃料として液化天然ガス(LNG)を大量に利用する大手電力会社や、石油会社、製鉄会社など異業種の企業が、自由化された大口需要家向けのガス販売に乗り出している。

  たとえば、新日本製鉄は三菱化学へ、帝国石油松下電器産業へガスを供給している。
  しかし、ガス会社でも一方的に攻め込まれているわけではない。ガス会社は都市ガスの原料となるLNGのインフラを大量に抱える。最大手の東京ガスや大阪ガスなどはその特徴を活かして、LNG燃料を使用する発電事業に参入を果たしている。

歴史

10年前から電力の自由化が急ピッチで進む

  電力業界は長い間、電気事業法によって既存の10電力会社が電力の小売事業を独占してきた。しかし10年前から、電力の規制緩和、自由化が急ピッチで進められている。
  1995年12月の電気事業法の改正によって、電力以外の会社が10の電力会社向けに電力を販売する「電力の卸売り事業」への新規参入が解禁された。電力会社6社が実施した卸電力の入札では、新日本製鉄大阪ガス東燃ゼネラル石油など多数の非電力企業が応募した。
  2000年3月から施行された改正電気事業法では、大口顧客向けの電力の小売事業の自由化が開始された。さらに03年3月からは、需要家の対象が広げられ電力小売の自由化は加速した。電気の使用規模が2000㌔㍗以上で、2万ボルト以上の高圧線で受電する大口需要家が対象となった。具体的には、大工場、デパート、大型ショッピングセンター、ホテル、高層ビル向けの小売である。04年度からは、中規模工場やスーパー向けが自由化の対象となった。

05年度から電力取引所が開設される

年間53万kwhの発電能力を有する大規模な太陽光発電設備「サンヨーソーラーアーク」(岐阜県)
年間53万kwhの発電能力を有する大規模な太陽光発電設備「サンヨーソーラーアーク」(岐阜県)

  そして07年度以降には、一般家庭や小規模商店向けの電力の小売が自由化される予定である。これによって、電力の小売の自由化は完成に向かう。
  また電力会社が余剰電力を相互に融通する取引市場として電力の経済融通市場があるが、従来からの大手電力会社に加えて、01年4月からは新規の参入企業にもこのマーケットが開放されるようになった。
  こうした自由化の結果、従来の10電力会社による地域独占供給の体制が崩壊して、電力の小売分野でも外資を含めた新規参入業者との厳しい価格競争が始まろうとしている。

ガスは大手4社が80%を独占

  ガス業界でも電力業界と同様に、自由化の何が押し寄せている。これまで日本の都市ガスは、全国に約240社ある事業者による地域独占体制が続いてきた。先に紹介した東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスの大手4社が全体の販売シェアの約8割を占め、残りの2割を全国約230社の中小企業で分け合っている。中小企業が多いことが、電力業界との大きな違いである。
  ガス業界の規制緩和は、1995年から大規模工場やビルなど年間契約量200万立方㍍以上の顧客を対象にスタートした。さらに99年からは、同100万立方㍍以上の顧客を対象に直接販売する小売が自由化された。04年からは50万立方㍍以上の顧客が自由化の対象とされ、07年からは10万立方㍍の小規模向上やビルの顧客向けが自由化される予定だ。
  家庭用などの小口需要を対象とする完全自由化については、実施時期は未定となっている。このように自由化や規制緩和は、電力、ガス会社の経営にも大きな変化をもたらすことが確実だ。

将来を展望するための3つのポイント

ポイント1
競争に打ち勝つため、営業体制を強化できるか

東京電力の八丈島風力発電所
東京電力の八丈島風力発電所

  自由化や規制緩和が進めば、電力やガスの市場は新規参入組が増加することによって、これまでの売り手市場から買い手市場に性格が変わっていくことが予想される。各会社とも大口の優良顧客を他社に奪われないように、営業体制を強化する必要性が高まっていこう。独占企業がようやく普通の企業に変わらざるを得なくなったのだ。
  しかし営業の強化と言っても、電力やガスと言う“製品”の差別化は難しい。価格の安定と安さが決め手となる。そのため、電力会社やガス会社は設備投資の大幅な絞込みを行い、有利子負債の圧縮を図ることで、ライバルとの競争で料金を引き下げてもしっかり利益の出せる体質作りが必要になってこよう。
  一方で、普通の会社への変身に伴う副産物ではないが、電力会社やガス会社が利益を意識するあまり、原子力発電所や火力発電所の建設など新規の設備投資を渋るようになると、安定供給に問題が生じてくる恐れがある。特に電力は大量の貯蔵や緊急の輸入などが難しく、消費のピーク時には停電などが頻発する可能性も高まってこよう。

ポイント2
新規事業への展開できるか

  電力やガスの本業が自由化や競争の激化によって収益が落ち込むようになれば、新規分野で収益を埋め合わせようという動きが強まることは必至だ。

  電力の小売自由化に伴って、これまで電力やガス会社に課せられていた兼業規制も撤廃され、新しい事業領域の開拓に精を出す企業グループも出始めた。たとえば、東京電力グループでは、2005年度までに同グループ外に対する売上高を1999年度に比べて5000億円以上拡大することを目標にした大胆な計画を推進中だ。エネルギー・環境、情報・通信、住環境・生活関連の3分野が重点育成分野として掲げられている。

ポイント3
ガス業界で中小企業の淘汰・再編はどこまで進むか

  電力業界と異なり、ガス業界には230社強に及ぶ中小事業者が全国に広がっている。その大半が、年間の売上高が数億円から数十億円と言う零細企業だ。これまでは政府の指導による地域独占に守られてきたが、自由化によって競争が激しくなれば淘汰・再編に追い込まれる中小企業がこれから増えてくることになるだろう。

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