「各論」になると業界利害を優先してしまう体質
金融界も実は、こうした認識を総論で理解している。しかし、各論になると業界利害を優先して、「株式の完全売却まで新規事業を認めない」と主張していた。ある委員会関係者は「志のある金融マンが、民業圧迫論をいつまで言っていても顧客の共感は得られないとこぼしていた」と打ち明ける。そんな業界事情を見透かし、「所見」は「既存の金融機関との健全な競争で、国民の利便性が向上する」と競争を恐れるなと訴えた。
郵便貯金と銀行業界は「百年戦争」と呼ばれる対立の構図が続いた。ほんの10年前の96年には、郵便局ATM(現金自動預払機)と銀行ATMの接続問題があり、敵対する郵政省(当時)との提携論議はタブー視されていた。アンチ郵政の雄である東京三菱銀行がATM接続したのは04年暮れと最近のことだ。
新会社の新規業務といっても、例えば住宅ローンを扱える人材や審査体制、システムが整うには2年程度かかり、田中委員長も「業務拡大は段階的なものになる」と述べている。それでも、住宅ローンにゆうちょ銀行が参入し、健全な競争でローン金利が下がれば、国民も郵政民営化のメリットを享受できる。今回の「所見」で国民から乖離した不毛な論争が終わるのか。とかくサービスが悪いと言われる日本の金融業界は新秩序に向けて脱皮する覚悟が問われている。