2024年 5月 1日 (水)

上場企業の配当過去最高 背景に敵対的な買収回避の狙い

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再編のうわさが絶えない業界で増配が進む

   配当金総額が2けた増と大幅に上昇する背景には、5月から「三角合併」制度が解禁されるなど、本格的買収時代に向け、企業が防衛を図る意図が働いている、と指摘される。企業は増配を発表すると株価が上昇する傾向が強い。さらに、増配などで現金を吐き出さずに内部にため込めば、その企業を買収した企業は内部留保と相殺した実質的な買収額が下がることになり、容易に買収資金回収できるため、買収の標的になりやすい。

   07年3月期決算をみると、鉄鋼や医薬品など再編のうわさが絶えない業界で積極的な増配が進んでいるのも、こうした見方を裏付ける。新日本製鉄は前期の1株9円から10円、JFEホールディングスは同100円から120円、神戸製鋼所も同6円から7円と、相次ぎ増配に踏み切るのが、その代表。医薬品業界でも、最大手の武田薬品工業が前期の1株106円から128円、第一三共は同25円から60円、アステラス製薬は同70円から80円、エーザイも同90円から120円へと、そろって増配する。

   鉄鋼や医薬品業界は、企業が市場から自社の株式を買い入れて償却し、1株当たりの利益を押し上げる「自社株買い」の動きも激しい。新日鉄は07年3月期に前期の2倍の約1000億円の自社株取得を実施し、JFEと武田は初めて自社株取得を行った。

   市場関係者は「日本企業はこれまで内部留保を重視し、安定配当を中心としてきたので、配当を大幅に上げるケースは少なかった。しかし、敵対的買収の動きが広がる中、株主利益を向上させて、株主を見方につける手法が重視されつつある」と指摘、今後も配当増の動きは進むとの予測は根強い。

   増配は株主にはありがたいことだが、企業には持続的な成長戦略をきちんと描き、実践する責任が一段と重くのしかかる。「景気が良いから増配」という単純な図式を乗り越え、真に株主重視の経営にかじを切ったのか、まだ見極めが必要のようだ。

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