2024年 4月 25日 (木)

「F1を東京・お台場で」 ホンダと協力するトヨタの思惑

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   2008年から富士スピードウェイ(静岡県)と鈴鹿サーキット(三重県)の交互開催となったフォーミュラー・ワン世界選手権(F1)日本グランプリ。F1は1カ国1開催が原則であり、2007年から2011年まで5年間はトヨタ自動車側の富士スピードウェイで開催される予定となっていた。F1開催の早期復活を望むホンダ側の鈴鹿サーキットに対し、悪役となることを恐れたトヨタ側が開催権の一部を譲った形だ。だがトヨタの思惑はそれだけではない。ホンダに恩を売って協力を取り付け、東京・お台場でのF1開催を実現させる狙いもあるようだ。

2010年以降は富士と鈴鹿がそれぞれ隔年開催

お台場でF1は開催できるのか
お台場でF1は開催できるのか

   F1日本グランプリは1976、1977年の2年間が富士スピードウェイ、その後、1987年から2006年までの20年間は鈴鹿サーキットで開催された。2007年から5年間の開催権は富士スピードウェイが取得していた。

   トヨタは2000年の富士スピードウェイ買収発表時に、2002年にF1参戦するトヨタF1チームのホームコースにすることと、F1開催の権利獲得を目指すことを表明。さらにトヨタの経営陣は、富士スピードウェイでトヨタF1チームが表彰台に上ることを夢見ていた。このため約200億円を投じてコースを全面改修したのだ。

   一方の鈴鹿サーキットは、ホンダが1962年に開設した名門コースだが、国際自動車連盟(FIA)から施設の老朽化やコースの安全性が指摘されていた。これがF1日本グランプリの開催権が富士スピードウェイに移った一因。鈴鹿サーキットにとって開催権を奪われたのは痛手で、地元の鈴鹿市などと共同で復活に向けた要望活動を行っていたが、本格的にコースを改修するよいタイミングとなった。

   今回の富士スピードウェイと鈴鹿サーキットの交互開催は、FIの開催権などを管理するフォーミュラー・ワン・アドミニストレーション(FOA)の提案に、富士スピードウェイが合意。2007、2008年は富士スピードウェイ、2009年は鈴鹿サーキットで開催し、2010年以降は富士スピードウェイと鈴鹿サーキットがそれぞれ隔年開催することが決まった。

   富士スピードウェイは日本のモータースポーツの聖地、鈴鹿サーキットは日本のF1の聖地などとも言われ、鈴鹿を愛するF1ファンは多い。F1で数多くの勝利を手にしてきたホンダのホームコースでもあることから、ファンの鈴鹿サーキットに対する思いはなおさらだ。このためF1日本グランプリの開催権を手にした富士スピードウェイ=トヨタに対して批判もあった。

アジアでのナイトレースと市街地レースが焦点

   2007年の世界生産台数でGMを抜き世界一となることがほぼ確定しているトヨタだが、F1チームの成績は今ひとつ。悪評を少なくしたいところもある。トヨタとしては、閉鎖に向かっていた富士スピードウェイを立て直して日本のモータースポーツ文化を守っただけでなく、今回は鈴鹿サーキットの窮地も救ってホンダに恩を売ったことになるのだ。

   トヨタがF1に力を入れた当初の目的は、F1の人気が高い欧州でのブランドイメージを高めることだ。だが近年、F1人気はアジアでも高まり、アジアでは日本のほかマレーシア、中国、バーレーンでF1が開催されている。それに2008年のシンガポールや2010年の韓国、中東では2009年のアラブ首長国連邦(UAE)でのF1開催が決まっているほか、インドも候補地となっている。

   米国は2008年の開催を断念したが、旧西欧中心のF1から世界のF1への流れは続き、新興国を含めた自動車主要市場へと開催地が広まっている。世界生産・販売で不動のトップの座を手に入れたいトヨタにとって、F1は最大の広告塔になりつつある。そのF1開催についてFOAは、アジア地域でのナイトレースと市街地レースの開催を要望している。

   ナイトレースは、アジアでの決勝スタート時間が、欧州では早朝となる時差の問題の解消策。欧州でのテレビ放映の視聴率を上げるためには不可欠だ。また市街地レースはサーキットよりも観客動員が見込めるだけでなく、なんといってもスリルがある。シンガポールではF1史上初のナイトレースが行われることになるが、FOAは東京都心部での開催に興味を持つ。その場合、1国1開催の原則からナイトレースは除外してもかまないというのだ。

フジテレビの本社がある「お台場地区」に着目

   F1が日本で年間2開催となることは、アジア地域のF1情報発信地としての地位を得ることにもなる。将来的には韓国のヒュンダイや、さらに中国やインドの自動車メーカーもF1に参戦する時代が来る。F1の世界の中で、トヨタもホンダも自分のチームがレースで勝つことはもちろんだが、アジアの中での日本の位置づけを高くしておかないと、アジア市場でのブランド力が低下する。トヨタがGMを抜くように、ヒュンダイや中国メーカーがトヨタを追い抜く日はやってくるかもしれない。アジアでナンバーワンブランドであり続けるためにも、モータースポーツ界における日本の地位を高くしておく必要があるのだ。

   そこでトヨタは、東京臨海副都心にあるお台場地区に着目した。日本でのテレビ放映権を持つフジテレビの本社があり、フジテレビ側もお台場開催には関心がある。加えて東京都もF1開催を模索していた時期があり、その後の東京マラソン開催で広域の交通規制のノウハウを取得しはじめている。

   だが、お台場F1グランプリの実現には、他のF1チームの同意を得ることも重要なポイントであり、F1の世界で実績のあるホンダの協力が必要不可欠だ。またお台場開催が実現した場合、トヨタも毎年富士スピードウェイとお台場という2つのF1開催の面倒を見ることは、金と人の両面で難しい。ホンダの協力を得ることで、お台場F1グランプリの開催は実現に近付く。トヨタは富士スピードウェイとお台場の両方のレースで表彰台に上り、トヨタブランドの優秀さを世界にアピールすることを狙っているのだ。

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