「源氏物語千年紀」にちなんで制作されたアニメが、思わぬところで評判になっている。原作とはかけ離れた設定や、性描写の多さが、波紋を呼んでいるようなのだ。一方、「もともと源氏物語は、主人公の恋愛遍歴を綴ったものなので問題ない」などとする擁護論も根強い。「ドロドロとエロさが無ければ源氏物語ではない」評判になっているのは、2009年1月から、フジテレビ系の木曜深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送されている「源氏物語千年紀Genji」と呼ばれるアニメだ。源氏物語の作者である紫式部が1008年11月1日の日記で、初めて源氏物語について記述したとされていることから、その1000年後の2008年は「源氏物語千年紀」として、関西地区を中心に様々なイベントが開催された。このアニメも、「源氏物語千年紀」にちなんで企画されたもので、監督・脚本は、「鉄腕アトム」「あしたのジョー」「エースをねらえ!」などを担当したことで知られる出崎統氏。オープニングテーマは椎名林檎が作詞・作曲し、PUFFYが歌っている。議論を呼んでいるのが、その内容だ。例えば第1話では、9歳の光源氏が帝の側室、つまり義理の母親にあたる「藤壺」(14)とキスをするシーンが登場。第2話以降も、様々な女性との関係が性描写を交えながら描かれる。現在、公式ウェブサイトで公開されている人物相関図を見ただけでも、2人の女性と夫婦関係になり、3人の女性との恋愛関係が描かれている。こんな状況に、ネット上では、「原作とかけ離れている」「吐き気に襲われた」といった批判の声があがる一方、源氏物語は、そもそも男女の愛憎劇を描いた作品なだけに、「むしろドロドロとエロさが無ければ源氏物語ではない」などと擁護論も目立つ。コンセプトは無常観で、危うさを表現出崎監督は、作品のコンセプトについて「コンセプトは無常観。すべてが夢だったかもしれないし、現実かもしれない。ふと風が吹くと消えてしまうような危うさを表現したかった」(09年1月20日、東京新聞)としており、これを支持する声も根強いようだ。例えば読売新聞の投書欄(2月23日)には、45歳主婦による「幻想的でゆったりした動きのアニメーションと、ささやくようなナレーションに心が洗われます。エンディングの歌もすてきで、いつまでも余韻にひたっていられるようです」との投稿も掲載されている。テレビでの放送は全11回シリーズで、現段階では、第8回目まで放送されている。今後のストーリー展開に注目が集まりそうだ。
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