2024年 4月 19日 (金)

なぜ増える「エイズ感染」 同性愛者対策に遅れ?

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   日本でエイズの感染・発症者が増えて2008年は過去最多となり、うち同性愛による割合が6割にも達したことが厚労省の調べで分かった。「ハッテン場」など交流の場が増えてきたことなどが原因らしい。が、対策の遅れも指摘され、さらなる拡大が懸念されている。

ハッテン場やSNS通じ感染拡大

   同性愛によるエイズウイルス(HIV)感染やエイズ発症の割合が、伸びてきている。

   厚労省のエイズ動向委員会の調べでは、感染・発症者は6年連続で増え、2008年は過去最多の1557人に。うち、同性間の性的接触によるケースは968人となり、全体の6割にも上った。ただし、この94%を男性が占めている。

   エイズが増えた理由について、厚労省の疾病対策課では、男性の同性愛者を中心に、感染が一定の広がりをみせていることを指摘する。東京・新宿などのゲイバーやハッテン場、そしてSNSなどのネット上で、同性愛者同士の出会いが増えているからだ。また、タレントを起用するなどした啓発活動で、検査する人が増えていることも原因としている。

   エイズは血液で感染することが多い。同性愛者の方が感染しやすいのは、男性同士の性的接触で出血しやすいからだという。

   同性愛者の感染が増えた背景には、対策の遅れがあるとの指摘が出ている。

   日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスの高久陽介事務局長は、「同性愛者への対策費は、国のエイズ予算全体の十数%です。同性愛による割合が6割なのに比べて、予算のアンバランスが目立ちます。比較にならないぐらい、少ないのではないですか」と話す。

   豪シドニーでは、同性愛者の割合が8割もある。が、それに応じた予算配分をしているため、新規の感染・発症者が増えなくなっているという。

発症割合、地方は東京の3~4倍も

   さらに、対策の遅れが、発症の増加をも招いているというのだ。日本HIV陽性者ネットワークの高久陽介事務局長の話。

「感染・発症全体のうち発症の割合は、東京では十数%です。しかし、地方は、30~40%ぐらいのところも結構あるんです。発症して初めて分かる人も多く、同性愛者の人口が多くて啓発が活発な大都市圏とは、明らかに格差が出ています。発症すると、肺炎や脳症を起こして3か月ぐらい入院することも多いんです。今の予算では、東京、大阪ぐらいで手一杯。もう少し手を打たないといけません」

   エイズに詳しい名古屋市立大の市川誠一教授は、同性愛者向けの啓発そのものも不十分だったことを指摘する。

「エイズ予防のコンドームは、異性間の着用ばかりが強調され、同性愛者には十分に情報が入っていません。啓発が積極的でなく、結果的に対策が遅れてしまったということです。このため、同性愛者は、気づかなかったり、相談しにくかったりして検査せず、感染が拡大してしまったのかもしれません。欧米では、啓発に進んで取り組んだ結果、1990年代後半には感染・発症者を減らしています。日本でも、もっと早く取り組んでいれば、今のような感染の広がりを避けられたのではないでしょうか」

   今後については、市川教授は、「エイズがここ4、5年のうちに地方などでさらに増える可能性があり、その伸びは、曲線のある上向きカーブになっています。行政の広報のほかに、当事者に届くようなNGOのメッセージも活用して、予防を地道に呼びかけるしかないでしょう」と話している。

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