2024年 4月 30日 (火)

政治漂流 2010参院選 
ネットで民意拾う直接民主制 これで「政治家」いらなくなる
早稲田大学教授の東浩紀さんに聞く

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ツイッターの「つぶやき」は無意識の意思表明

――ネットの方が民意を知るのに有効だ、ということですか。

 政治でネットを有効に使えるのは、「議論を戦わせて合意形成に至る」という点よりも、無意識に行っている政治的意思表明を拾い上げる機能にあると思っています。
   「無意識に行っている政治的意思表明」とは、ツイッターの「つぶやき」に顕著ですが、ブログで長い文書を書こうと身構えるのではなく、140字(ツイッターの文字数制限)という短さゆえに、書く方は素直な感想を表明できるし、読む方も率直な声を知ることができるのです。私自身、沖縄の基地移設問題でブログを書くのは荷が重すぎますが、ツイッターなら気軽に発言できました。同様の人は少なくないと思います。

――「ネットによる直接民主制」と聞くと、何でもネット投票で決めましょう、というイメージが浮かびますが、違うのですか。

 ええ、違います。むしろ、国政などで専門知識が求められる議論や決定は、分野ごとに専門家が議論を尽くした方が良いと思っています。その専門家こそが、私の「新しい政治家」のイメージです。そして彼らがみんなの政治的意思表明を知る手段としてネットは大変有効なのです。
   先に触れた「SNSによる直接民主制」だけではなく、こうしたネットを介した「政治家」と有権者の意思疎通のイメージも広い意味で「ネットによる直接民主制」として捉えています。
   また、新しい「政治家」は、現行の政治家のように「フルタイムのプロ」ではありません。ほかに仕事や専門分野を持った人がボランティアとして、専門分野での議論に参加するのです。そうなると、政治家のすがたはずいぶんと変わります。

――ご指摘のような流れは実現化するでしょうか。

 人々の想像力が現実のシステムの力に追いついてくれば可能ですが、まだ「ツイッターをやったことがない」という人も相当数いる現状では、実現はまだ先でしょう。
   ネット選挙解禁が政局のごたごたで流れてしまいましたが、「ブログの更新が可能に……」などというレベルは早く乗り越えて、地理・規模の制約を簡単に超えることができる、このネットというシステムを意思集約に有効に使う方法について、真剣に考える時期に来ていると思います。

東浩紀さん(@hazuma) プロフィール
あずま ひろき 1971年、東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。1999年度、「存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて」でサントリー学芸賞受賞。2001年、「オタク」などを論じた「動物化するポストモダン」を出版。「ゼロ年代(2000年代)の批評家」として知られる。現在、早稲田大学文学学術院教授、東京工業大学世界文明センター特任教授。2010年、単著としては初の長編小説「クォンタム・ファミリーズ」で三島由紀夫賞を受けた。

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