NHKは2010年10月8日、報道局スポーツ部に所属する30代の記者が、大相撲の野球賭博事件に関連して、警察の捜査情報ともとれる内容を携帯メールで日本相撲協会関係者に送っていたと発表した。記者が取材で得た情報を関係者に「横流し」する問題はたびたび指摘されているが、捜査情報が横流しされることは珍しい。NHKは大相撲のテレビ中継をしており、この点も含め取材対象との距離感が改めて問われることになりそうだ。「相手の反応をとって、その後の取材に活かそうと思った」?NHKによると、記者は名古屋場所が行われる直前の7月7日午前、「あした、賭博関連で、数カ所に警察の捜索が入るようです。すでに知っていたらすいません。他言無用でお願いします」などとするメールを相撲協会関係者に送信。同日午前、野球賭博にかかわったとされる力士らが所属する相撲部屋に対して、実際に一斉捜索が行われた。今回の問題は、NHKの別の記者が取材を進める中で10月6日に「このような噂があるらしい」などという情報をつかんで発覚。情報を横流しした記者は、2度のNHKの事情聴取に対して、「大相撲の野球賭博をめぐるNHKの内部の取材情報ではなく、日頃から付き合いのある他社から聞いた話だったので、相手の反応をとって、その後の取材に活かそうと思った」などと話しているという。記者のオフレコメモで議員の動きを掴むNHKは、「捜査情報と受け取られかねない内容を、その対象者に伝えるのは、報道に携わる者としてあってはならないことであり、極めて遺憾です。視聴者の皆様に深くお詫び申し上げます」とのコメントを発表した。実は、取材メモが関係者に流出しているという話は、これまでにも多く指摘されている。例えば、月刊誌「選択」10年10月号では、「永田町動かす『オフレコメモ』日本独自の情報戦」と題して、官邸が記者のオフレコメモで民主党内議員の動きをつかんでいる様子を詳細に報じている。全国紙OBは、「世論調査のデータを掲載前に政治家に流したり、政治部の記者が、政治家についての捜査情報を(警察取材をしている)社会部に要求して大げんかになったということは聞いたことがあります。ですが、実際に捜査情報がこういう形で横流しされるケースは珍しいのでは」と嘆息している。
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