2024年 4月 28日 (日)

尖閣ビデオ「流出」称賛の声 「犯人逮捕」で英雄扱い?

   尖閣ビデオ流出は「事件」として捜査が始まった。どうやら海上保安庁関係者に疑いの目が向けられているらしい。しかし、インターネットでは「歓迎する」という意見が圧倒的なほか、「称賛される行動だ」とする評論家もいる。野党からも「犯人捜しをやっている場合か」と責め立てられ、民主党は極めて苦しい立場に追い込まれている。

   約30万7000票中、尖閣ビデオ流出を「歓迎する」が65%、「問題だ」は15%――ヤフー・ニュースが2010年11月5日から始めた意識調査で、8日夕現在の結果は、圧倒的に「流出」を肯定的に捉えている。ほかに、「やむをえない」という消極的肯定派が20%いる。

「他にやることがあるだろう」

尖閣ビデオ問題の行方は?
尖閣ビデオ問題の行方は?

   ヤフー・ニュースに流れた尖閣ビデオ流出の記事のうち、100件前後のコメントが寄せられている時事通信などの記事コメント欄を複数みても、「意識調査」と同様の傾向がうかがえる。

   「他にやることがあるだろう」との指摘が多数並び、中国漁船による衝突事件をあらためて解明すべきだ、中国に抗議すべきだ、などと声をあげている。「警視庁公安部の資料流出の捜査の方が重要だ」「日本の名誉国民として表彰するべきだ」との意見もある。中には「無罪と言いたい気持ちは分かるが、(流出は)明らかに犯罪行為」とたしなめる人もいるが、少数派のようだ。

   「民主党は犯人捜しをやっている場合か」。みんなの党の渡辺喜美代表は11月7日、山梨県内の講演でこう指摘した。仮に「犯人」が分かっても、「その人は英雄になり、民主党政権は恥の上塗りになる」。

   確かに、今回の映像を流出させた人物について、元内閣安全保障室長の佐々淳行さんは「正義の味方、月光仮面」(11月5日、フジテレビ系「とくダネ!」)と評している。仮に流出させた人物が罪に問われることになれば「弁護する側に回りたい」とも話していた。

   11月8日の情報番組でも、コメンテーターの勝谷誠彦さんは「国家公務員法(違反容疑)でやりゃあいいじゃないですか。ボクは彼、彼女を徹底的に守りますよ」(日本テレビ系「スッキリ!!」)と擁護していた。

海保への電話8割近くが「応援」

   こうした意見の背景には、ビデオを見れば中国船側の問題行為は「一目瞭然」(前原誠司・国土交通相=当時)とされながら、一般公開されてこなかったために中国側からの反論を許した、との不満がある。中国漁船の船長が釈放され「裁判の証拠」となる可能性は事実上なくなった段階で、機密扱いする必要性は低くなっていたではないか、というわけだ。

   全国紙の社説(11月6日付)は、「流出犯の弁護」をかってでるところはなく、力点の置き方に違いはあるが、流出自体は問題視している。今後の一般公開について、日経と産経は「踏み切るべきだ」と主張し、朝日は「短絡的な判断は慎まなければならない」と慎重な姿勢を示している。

   尖閣諸島をかかえる沖縄・石垣現地の声はどうなっているのだろうか。石垣市議会の伊良皆高信議長にきいてみた。

   伊良皆議長は、「映像流出犯の問題ばかりが騒がれ、尖閣諸島問題の本質が置き去りにされるのが心配だ」と話す。今回の事件を受け、尖閣周辺を警備・警戒する海保や水産庁の船を増強するのかどうかなどについて一向に議論が進んでいる気配がない、と懸念を示している。「本質から目をそらすのは困ります」。

   海上保安庁の政策評価広報室によると、「流出」が大きく報じられた11月5日以降8日正午現在で、電話が177件、メールが770件寄せられた。電話では8割近くの138件が、海保を「応援する」内容だという。流出そのものに対する意見というよりも、「(海保が)頑張っているのが分かった」「ありがとう」といった反応が多いそうだ。一方で「情報管理をきちんとすべきだ」との批判の声もある。メールの内容については「まだ分析できていない」。

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