2024年 4月 30日 (火)

国会議員には「秘密漏えい」適用なし 「マスコミに話す」のもOK

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   国会で限定公開された尖閣事件映像の内容を国会議員がマスコミに話したことは「秘密漏えい」にならないのか――映像を流出させたと名乗り出て「秘密漏えい」の疑いで捜査機関から調べを受けている海上保安官(43)を擁護する声の中には、こんな素朴な疑問も散見される。

   該当の保安官については、逮捕は見送られたものの、国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで、捜査が続いている。「秘密」である尖閣映像をネット上に意図的に流出させた、という容疑が持たれている。同法の規定では、守秘義務違反は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められている。

政務3役には「守秘義務」規範あり

   ネットなどでの同保安官擁護論のひとつに、問題の映像は「秘密」にはあたらないのではないか、という指摘がある。その議論の延長で、11月1日に衆参予算委の理事たちに限定公開された映像の内容を多くの国会議員がテレビカメラの前で話していたことは「秘密漏えい」にならないのか、との声も一部で出ている。各テレビ局は、国会議員の証言などをもとに再現映像を流していた。これも一種の「映像流出ではないか」というわけだ。

   総務省人事・恩給局によると、国家公務員法が「秘密を守る義務」を課しているのは、「一般職」の国家公務員だ。大臣たちは「特別職の国家公務員」で、同法の守秘義務規定は適用されない。しかし、内閣官房によると、「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」が定められており、「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」との項目がある。ただし、罰則はない。

   国会議員は同法の対象外だ。医師や弁護士らについては、刑法で「秘密」をもらすことが禁じられており、「6か月以下の懲役または10万以下の罰金」となっている。この条文も国会議員にはあてはまらない。

   衆参両院の各広報課によると、国家公務員法の守秘義務規定に準じるような規定は、国会法にも衆・参院各規則にも「ない」。非公開の秘密会の場合、個別に公開可能情報が制限される可能性はあるが、一律に規則で縛る、という性格のものではないようだ。国会議員の「自由度」は、国家公務員らに比べ、はるかに高いということになる。

国家公務員法の守秘義務違反「罰則強化」か

   マスコミが関係する秘密漏えい事件としては、1972年に毎日新聞記者(当時)らが国家公務員法違反の罪で起訴された「沖縄密約事件」(西山事件)が有名だ。聞き出した記者も話した女性事務官も有罪が確定した。記者の裁判の最高裁判決(78年)は、次のような考えを示している。

   一般論として、報道機関の国政取材は「公務員の守秘義務と対立拮抗する」。しかし、報道の自由は、憲法が保障する表現の自由のうちでも「特に重要」などと指摘し、取材の方法が「社会観念上是認されるもの」である限り、取材活動は「実質的に違法性を欠き正当な業務行為というべき」と認めている。その上で、取材の方法によっては「正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びる」として同事件を具体的に論じていく。

   沖縄密約事件はさて置き、上記最高裁判決を踏まえると、2010年11月1日の国会限定公開映像の中身を国会議員から聞き出したマスコミの行為には問題はなさそうだ。

   仙谷由人官房長官は11月8日、衆院予算委員会で映像流出事件に関連し、「国家公務員法の守秘義務違反の罰則は軽く、抑止力が十分ではない」と指摘し、「秘密保全に関する法制のあり方について、早急に検討したい」と述べた。罰則強化の可能性に触れたものだ。

   仮に、公務員が守秘義務規定に違反して「秘密」を国会議員に漏らした場合はどうなるのだろうか。実際にはよくある例だと思われるが、公務員は厳しく処罰されるようになるのだろうか。

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