2024年 4月 28日 (日)

食事、飲み物、毛布、アイマスク有料 「自分で事前に調べる」ことは必須 
(連載「LCC革命の衝撃」第2回)

   エア・アジアXのチケットをようやく入手してから約2か月半。2010年12月9日、いよいよ羽田発クアラルンプール行きの初便が飛ぶ日がやってきた。LCCのフライトは、これまでの航空会社と何が違うのか。「搭乗記」の第2回は、チェックインと7時間半にわたるフライト中の様子をお届けする。

   記者が担当する原稿を書き上げて、東京・麹町のオフィスを出たのは、2010年12月9日の19時半ごろだった。山手線や東京モノレールを乗り継いで、20時半には羽田空港の国際線ターミナルに到着した。モノレールは「浜松町から国際線ターミナルまで最速13分」を売りにしているだけあって、オフィスからのアクセスの良さを実感した。

ウェブチェックインは日程表の片隅に小さく書かれていた

羽田空港のチェックインカウンターの前には、長い列ができた
羽田空港のチェックインカウンターの前には、長い列ができた

   エア・アジア初便のD7 2653便の出発予定は23時45分。3時間以上前なのだが、3階の出発ロビーの端に設けられたチェックインカウンターには、すでに約100人以上が並んでいた。

   大勢の報道陣が見守る中、チェックイン手続きが始まった。並んでいる人のほとんどが、事前にメールで送られてきた日程表をプリントアウトして手にしている。「パスポートなどの書類を出して荷物を預け、搭乗券を受け取る」という流れは、これまでの航空会社と変わらない。だが、機内食の内容や、預ける荷物の重さを確認し、追加料金を受け取る点が、LCC独特だ。ここで時間がかかったようで、列の進みも遅いように見えた。

   だが、幸運にも、記者はこの長い列を回避することができた。事前にウェブでチェックインの手続きを済ませて、搭乗券をプリントアウトしておけば、荷物を預ける人のために設けられた列に並ぶことが出来る。この列に並んでいたのは、せいぜい2~3人。空港でチェックインするのに比べると、少なくとも30分は時間を節約できたはずだ。

   だが、ウェブチェックインについては、日程表の片隅に小さく書かれていただけ。知っていた人は、ほとんどいなかった様子だ。LCCでは、「自分で、事前に調べる」ことが、労力なり金銭の節約に大きくつながることを早速実感した。

   クアラルンプールから出発するときは、プリントアウトした搭乗券をそのまま利用できるのだが、羽田では、改めて航空会社が印刷した搭乗券に引き換えていた。搭乗券にはシールが2枚貼られていた。客室乗務員(CA)が機内食などを配る際の目印にするようだ。

毛布、空気まくら、アイマスクセットが1000円

事前に700円で予約した機内食が配布された。ビール・飲み物は別料金だ
事前に700円で予約した機内食が配布された。ビール・飲み物は別料金だ

   定刻の22時30分頃、クアラルンプールから便が到着。報道陣がいっせいに到着便に駆け寄るが、出国審査を通過した後の待合室では、特に記念セレモニーが行われるでもなく、係員は淡々と搭乗ゲートの準備を進めていた。このあたりも、LCCらしさだ。

   ただ、初便だということもあって、真っ赤な制服に身をつつんだCAを撮影する乗客も多かった。

   搭乗が始まったのは、クアラルンプールからの便が到着して45分後の23時15分過ぎ。飛行機はエアバスA330型機で、ビジネスクラスとエコノミークラスを合わせて377席。エコノミーは掃除がしやすいように、シートは革張り。だが、座席間隔は78.5センチあり、他社と比べても特に狭いとは感じなかった。座席前のシートポケットには、機内食のメニューや、「安全のしおり」、機内誌などが備えられている。機内誌の表紙には「持ち出さないでください」といった旨の表記があった。こんなところでも、コスト削減が徹底されている。

   定刻の23時45分には出発の準備が整ったようで、CAがカウンターでカチャカチャと乗客の数を数える中、機長のアナウンスが始まった。乗客の多くが日本人で、満席とはいかないまでも、8~9割の座席は埋まっていた。

   ほどなく機体は離陸し、事前に1000円で予約してあった「快適キット」の配布が始まった。毛布、空気まくら、アイマスクがセットになったもので、機内では大変に重宝した。だが、それなりにかさばるため、渡航先で持てあます可能性も高いと感じた。機内で使い捨てにするという選択肢もありそうだ。

座席が倒れる角度は10度強しかない

   出発から約2時間が経過した1時25分ごろ、機内食の販売が始まった。機内に飲食物の持ち込みは認められていないので、何かを食べたり飲んだりするためには、この機会を利用するしかない。記者が受け取った機内食は、「ペンネのチキン狩人風ソース」。アルミ製の弁当箱のような容器に、鶏肉とご飯と、しめじを詰めたものだ。

   記者はこの機内食を事前に700円で予約していたが、その場で注文した場合は900円。安いとはいえない設定だ。飲み物も買わなければならない。ビールとワインで30リンギット(約800円)。日本円でも支払いできるが、使えるのは紙幣だけだ。さらに、おつりはリンギットで戻ってくる。やはり効率化は徹底されている。

   2時15分過ぎには室内の明かりが消え、大半の乗客が眠りについた。だが、座席が倒れる角度は10度強しかない。近くの席で赤ちゃんが夜通し泣いていたこともあって、記者は、ほとんど眠ることができかった。

   その3時間半後の5時50分には、機内食や免税品の販売が始まった。免税品を買う乗客は多くないが、寝起きでのどが乾いているからなのか、飲み物を求める乗客は多い。記者が買ったコーラは6リンギット(約160円)。日本の物価水準からしても、かなり強気な価格設定だ。このビジネスモデルは、「本体を安く売って、必需品を高く売る」という点で、インクジェットプリンターの売り方と似ているのではないかと感じた。

都心までシャトルバスで1時間以上かかる

   CAのアナウンスに従って時計をマレーシア時間(日本時間マイナス1時間)に合わせた直後の6時35分ごろ、飛行機は無事にクアラルンプール空港に到着した。CAが「ありがとうございました」と乗客を見送るのは、他の会社と全く同じだ。フライトとしては総じてスムーズで、コストパフォーマンスは高いと感じた。

   エア・アジアが到着したのは、06年にオープンしたばかりのLCC専用のターミナルだ。羽田と違ってボーディングブリッジはない。飛行機にはタラップが横付けされ、乗客は整備車両の間をぬって、屋外の屋根付きの通路を数百メートルにわたって黙々と歩く。建物は非常に質素で、壁などにも、特に装飾はほどこされていない。言うならば、倉庫の中に入国審査場が出現したようなものだ。

   さらに、都心部とのアクセスも、大きく違う。通常のターミナルと、都心の「KLセントラル」駅とは、専用鉄道で最速28分(35リンギット、約950円)で結ぶのに対して、LCCターミナルからは、シャトルバス(8リンギット、約220円)で1時間以上かかる。まさに「カネで時間を買う」形だ。

   荷物を受け取って税関を通過したのが、8時過ぎ。ホテルのチェックインが始まるのは14時なので、他国に乗り継ぐケースを除くと、市街地なりで「時間つぶし」する方法を事前に考えておくこともおくことも必要だ。

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