2024年 4月 24日 (水)

中国で強まる政府の言論統制  対抗策は即ネットに流すこと

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   中国政府のマスコミに対する「言論統制」はこのところ日増しに強まっている。中央ばかりでなく、地方政府、企業や団体も同じように口を出す。ただ、紙メディアが主な標的で、ブログ、ツィッター、掲示板での言論はほぼ放任状態にある。

   このため紙媒体の編集者は、「緘口令」がしかれる前に、とにかく記事にしてしまう。まずはツィッターで、次はインターネット、それから紙メディアに掲載する、といった順番なのだ。

定年退職したご老人達が新聞、雑誌に目を光らす

   共産党総書記、国務院総理など政府トップが住んでいる中南海の西に、道を隔てて、看版が付いていない4階建の建物がある。車の出入りはほとんどない。ここはマスコミを指導する「中国共産党中央宣伝部」だ。

   中国人民大学のある教授は、

「2010年から、定年退職者をもう一回雇い入れて、スタッフを増やし、世論動向に目を光らせている」

と明かす。2011年は、中国共産党設立から90周年、孫文が革命を起こして建国した中華民国も100周年を迎える。この節目の時期にメディアをいつもより注意深く見ようとしているようだ。

   しかし、定年退職した60歳以上のご老人達は、インターネットはまったく使えない。数日、中には一週間も遅れて郵送されてきた新聞、雑誌を読み、問題の発見に頑張る。

「数十人の規模で、1万社以上もある雑誌、3千を超えた新聞の監視が、ほんとうにできるだろうか。世論の方向をある方針に沿って誘導していくことは、インターネットの時代でまだ有効性を持つだろうか」

と同教授は哂う。

   中央だけでなく、地方に行けば、それぞれの省・市、市の下にある県もまたそれぞれ宣伝部組織を持っている。

   「中央からのお叱り」が来ると、その下の省は徹底的に原因を究明し、報告もする。中央の意図とは別に、とりあえず問い合わせがきたことについて厳しい結論を出す。言論統制の強化は、そこから来ている面もある。

   省など地方政府は、中央のご威光を借りて、できるだけ地方自治体に不利な報道を消したい、という意図がある。重大な事故、公害問題、賃金不払いなどから始まり、流行病、地方役人の腐敗問題まで、「報道を控えろ」という様々な要望が上がってくる。そして、緘口令が乱発されるという構造だ。

「まだ制限されていない。ネットから発信しよう」

   あるポータルサイトのニュース担当役員の携帯には、絶え間なく電話が入ってくる。中央の宣伝部関係者しか知らないはずの携帯の番号は、いつの間にか地方の宣伝部まで知れわたっているのだ。インターネットに掲載されている記事を削除してもらいたい、という要望が圧倒的に多い。

「国の政治方針や外交、経済政策について、文句があれば、まぁそれはよしとしよう。そうではなく、市長とか県知事レベルの役人のミスの報道くらいでも、たちまち削除依頼の電話が来る。さんざん公害をまき散らしている企業について記事にしたら、地元の宣伝部から電話が来る。削除してもらいたい、というのだ。全く理解できない」

   掲載された記事は、このポータルサイトの記者が取材したものではない。ほかの新聞、雑誌が公表したものの転載だ。ほとんどの紙メディアと配信契約を結んでいるので、地方のニュースでも時々サイトのトップページに出る。

   こうした中で、紙メディアの編集者たちは、「統制」を出し抜こうと、いかに早く情報を流すかに工夫を凝らしている。

   例えば、北京、南京、上海で起こった大火事。地元政府の素早いご指導のもとで、軍民が英雄的に火事と戦う「武勇伝」にあっという間に変化していく。その前に、火事の原因、市民の声などをできるだけ速く記事にする。

「まだ制限されていない。早いところインターネットから発信しよう」
「市民の声を紙面に飾ろう」
「言い逃れだが、その役人の声も併せて載せよう」

   編集部内では、編集長、デスクのそんな声が鳴り響く。紙面に載せてしまえば、宣伝部がいろいろいっても、もう後の祭りというわけだ。

   厳しい言論統制をうけながら、中国マスコミは頑張っている。ここ数年を見ても、野生トラのねつ造事件(陝西省)、大火事後に市民から献花(上海)、368万元の高速料金(河南省)といったヒットがあった。紙メディアでもやれる余地は十分ある、と中国の多くのマスコミ関係者は思っている。

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